使える韓国語フレーズ講座など、実用性も十分

ソウル旧市街、乙支路3街にある焼肉屋「トンイル・チプ」は、18時を過ぎるとたいてい満席になるという人気店。トゥンシムと呼ばれる脂身の少ない牛ロースがこの店の看板だ

 それゆえ、東京や大阪とは異なり、ソウルや釜山では、ターミナル駅の目と鼻の先にドヤ街や色街が残っていたり、路地裏ではハルモニ(おばあちゃん)が行商を営んでいたりする。チェーン店ばかりが林立し、昔ながらの情緒やいかがわしさが一掃されつつある日本とは対照的に、韓国では大衆酒場が健在。日本でいえば立石や赤羽にでもありそうな店が、あちこちに生きているのだ。

 棒ダラ、エイの刺身、イカ炒め、腸詰、茹で豚肉など、ざっかけない料理の数々が食欲を誘う。韓国焼酎やマッコリを飲みながら、ワイワイ宴を楽しみたくなる。

 本書には、単なる紀行文にとどまらず、最寄駅案内、所在地マップ、使える韓国語フレーズなどが掲載されており、ガイドブックとしても非常に便利。「適度ないい加減さを持つべし」「お店のデータは水ものと考えるべし」「略図はあくまで目安とすべし」など、巻頭に記された心得も楽しい。まさに、かの国のケンチャナヨ(“気にするな、大丈夫”ぐらいの意味)精神を体現している。

 消えゆく庶民のオアシスを求め、海峡を渡ってみよう。

『韓国酒場紀行 ソウル、釜山、地方 消えゆく庶民のオアシスを求めて』
鄭銀淑著
発行 実業之日本社
定価 1575円
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2013.02.21(木)