凱旋門まで見通せる 今のパリは不思議な光景

Q6. 外出自粛によるストレス、不安の解消法は?

 私は犬を飼っているのですが、室内ではトイレをしないので、規則の範囲内の距離と時間を守りつつ、毎日犬の散歩に出ています。

 今は花屋さんも閉まっていて、自宅のバルコニーの植木もまだ小さな蕾なので花を愛でることができませんが、犬の散歩でチュイルリー公園に行くと、遠くにライラックが美しい紫色の花をほころばせているのが見えて、癒やされます。

 また、早朝の犬の散歩は空気が清々しくて心地よいです。

Q7. ウェブサイトやSNSの新たな活用法は?

 ここ最近はあまり活用していないのですが、InstagramとFacebookに時々、投稿しています。

 Facebookでは愛犬家のお友だちが多く、しばらく投稿をお休みしていたらFacebookのわんちゃん仲間から「このごろ投稿がないようですが、原さんも(愛犬の)のあちゃんもお元気ですか?」「フランスの外出禁止令はとても厳しいようで、大変ですね」と、遠くからわざわざメッセージを送ってくださっていて、とても癒やされました。

 また、先日Facebookでキッチンペーパーを折って作る“ ORIGAMI MASK”の動画を目にしたのですが、完成したマスクは鼻から顎まできちんと覆えて、しかも美しい!

 もちろん、キッチンペーパーでは完全にウイルスをシャットアウトすることはできないだろうとは思いますが、私のようにマスクが手に入らない環境で暮らしている人たちにとってはとても役立つ素晴らしいアイディアだと思い、早速私もその動画をシェアしました。

 このように素敵な情報を素早く分かち合える点は、SNSやウェブサイトの魅力だと常に感じています。

Q8. 日々の暮らしで心がけていることは?

 早寝、早起きを心がけています。

 夜遅くまで起きているよりも、朝日が昇り始めて空が明るくなってきたころに犬の散歩に出掛けると、気分も明るくなれるので。

 また、スーパーでは手に入るお肉の種類が限られてしまうことが時々あるのですが、そのときは、あえてこれまで買ったことのない部位の肉を買って、手に入る食材で新しいレシピにトライしてみるのも楽しいです。

 先日は、ロニョン・ド・ヴォー(仔牛の腎臓)のマスタード風味や、鶏のマッシュルームソースがけを作ってみました。

Q9. ふさぎこみがちな昨今、心温まる話があればぜひ!

 以前よりもここ最近、人々が優しくなっているような気がします。

 これまではスーパーマーケットのレジで並んでいると割り込みするフランス人が多かったのですが、このごろは「誰もがみな、ソーシャルディスタンスを守りつつきちんと並んでいるんだから」という配慮なのか、あるいは時間ができて心にも余裕が生まれたからか、列にきちんと並ぶし、人々が穏やかになったような気がします。

 人によっては「スーパーで買い物していた時に1メートルも離れていたのに『そばに寄らないで!』とほかのお客さんに怒られた」ということもあったようですが、私は背が小さいので高い位置にある商品が届かずに困っていたら「取りましょうか?」と手伝ってくださったかたが何人かいらっしゃって。ありがたかったです。

 新型コロナウイルスが蔓延して以来、アジア人だと外国では辛い目に遭うことが多いと聞いたことがありますが、幸い私は今のところ嫌な目に遭ったことはありません。

 むしろ人々がお互いを思いやり、みな優しくなってきていると感じました。

Q10. CREA WEB読者にメッセージをぜひ!

 日本はフランスに比べると日々の生活スピードがとても速いので、家でじっとしているのをもどかしく感じてしまうかもしれませんが、お出掛けは必要最低限にとどめて、今は自宅で過ごしましょう。

 おしゃべり好きで話し込んだら延々と喋り続けているフランス人たちでさえも、今は道で長々と立ち話することを控えています。特例外出証明書には「同居人以外と一緒に出歩くことは禁止」と書かれているということもあって、警察に見つかると怒られてしまうという事情もありますが。

 非常事態宣言が出されて以来、もう何度も外出禁止令の解禁が延期されているフランス……。

 5月11日(月)からは外出できる距離が多少広がり、デパート以外の小さなブティックの営業は再開され、学校は登校可能となるものの、相変わらずカフェやレストランは営業禁止ですし、イベントなども9月までは行えません。

 “美食の国”“ファッションの都”として讃えられてきたフランスでさえも、未だにレストランでの外食は一切禁止で、メンズコレクションとオートクチュールのファッションショーも全て中止。また、2019-2020シーズンのフランスサッカーリーグなどのプロスポーツも全く開催できなくなってしまいました。

 それだけに留まらず、たとえどんなに結婚式を挙げたくても、区役所の結婚式場は5月11日(月)以降も閉鎖され続けるため、区役所の結婚式場でサインをしないと正式な夫婦として認められないので、当分の間は婚姻さえもできないのです。

 けれども、これまでだったら我儘放題に振る舞ってきたフランス人たちでさえも、この大変な現状を重々理解しているからこそ、素直にこの決定を受け入れているんですよ。

 今、みんなで頑張って感染を防げば、その分、今後はこれまで通りに健康で穏やかに暮らせる日々が早く訪れるのではないかと思います。

 ある意味、自宅で過ごせるということは水も電気も水道も通っているので、災害などにあって家で暮らせなくなってしまったかたがたのことを想えば、まだありがたい状況です。

 日本ではまだお花屋さんは営業していますか? おうちにお花を飾ってみると癒やされますよ。

 もちろん、お気に入りのインテリアに囲まれた暮らしも素敵ですが、そこにプラスアルファで「生き物=生命」が加わると一層、元気になれると思います。テーブルにブーケを飾るのも華やかですし、お庭やテラスに小さな鉢植えを置くのもいい。

 私は、花屋さんが閉店になる前に鉢植えのお花を買っておかなかったことが、今はとても悔やまれてなりません。

 ペットショップも閉まっているのでトリマーへも行けず、うちの犬は毛がもこもこ。それよりも私の髪をカットして欲しいです……(笑)。

 病院や薬局、スーパーマーケットのかたがた、メトロ、バスの運転手さんなど、毎日働き続けていらっしゃる人々のありがたさがひしひしと感じられます。

 テレワークも色々と大変だと思いますが、みんなで頑張りましょう!

※記事の内容は2020年4月29日(水)現在のもの。制度や現況の内容は一部であり、各自治体、エリアなどによって異なる場合があります。

原 正枝(はら まさえ)

パリ在住 フリーライター兼コーディネイター

東京モード学園を卒業後、同校のスカラシップにてロンドンのセントマーチンズへ留学。その後、パリに移り住み、パリコレやオートクチュールなどのファッション関連の取材や、ヴァンドームジュエラーを始めとする世界中の宝飾品の取材、ライフスタイルなどの企画にて、雑誌やカタログのための執筆、および取材コーディネートに携わる。また、権威あるホテル国際コンクールPrix Villégiature(プリ・ヴィレジアトゥール)で、日本人唯一の審査員として10年にわたって務める。Instagram: @masae.noa.hara   Facebook: 原正枝