警官が見守るなか 特例外出証明書を持って散歩
新型コロナウイルスの影響で、世界中が「#stayhome」の日々を送っています。
日本よりも長く自宅にこもる、海外のかたがた。その暮らしぶりは?
2020年3月17日(火)に外出禁止令が出されたフランスで、現地の様子や毎日の暮らしぶりを、ライター原 正枝さんにアンケート形式で答えていただきました。
» 「ロンドン」篇
» 「イタリア」篇①
» 「カナダ」篇
» 「イタリア」篇②
» 「台湾」篇
Q1. お住まいの場所を教えてください。
フランスはパリのルーヴル美術館やチュイルリー公園のすぐそば。コンコルド広場やオペラ座、パレ・ロワイヤルにもほど近いです。
パリへは東京から飛行機で約12時間半、時差はマイナス7時間(夏時間)です。
Q2. 外出できる条件や頻度など規制ルールは?
スーパーなどの買い物や犬の散歩、ジョギングなどの個人でできる軽い運動は、1日1時間、自宅から1キロ以内の範囲で、1時間以内は許可されています。
その際にはフランス内務省が発行している特例外出証明書をプリントアウトした紙に、氏名、生年月日、出生地、現住所、外出日と自宅を出た時間、サインを直筆で明記し、箇条書きされている外出の目的事項のうちひとつだけを選んで印をつけます。印刷できない場合には、書面を手書きしたものでもOK。
携帯電話からインターネットでの申請の場合は、直筆のサインの代わりにQRコードが提示されるので、外出時には特例外出証明書か、携帯電話などの画面上にQRコードを表示できるようにして、身分証明書とともに持参することが義務付けられています。
街中では警察官が常にパトロールしていて特例外出証明書の提示を求められることがあり、違反した場合には罰金を支払わなくてはなりません。1回目は135ユーロ(約1万5,660円)、2回目は200ユーロ(約2万3,200円)、1カ月以内に4回違反した場合には3,700ユーロ(約42万9,200円)に加え、最長6カ月の禁固刑に処されます!!
ただ、5月11日(月)からは100キロメートル以下の移動なら、外出が解禁される予定! 100キロメートル以上、あるいは県をまたぐ場合などは、特別な理由がある際に限り、証明書を持参すれば移動が許可されるそうです。
Q3. 日本ではテレワークが増えましたが、仕事の環境は?
フランスでは、レストランやカフェなどの飲食店は営業停止で、美術館や映画館なども休館しています。
これらの商業施設以外は5月11日(月)以降、営業を一部再開できる予定。レストラン店内での飲食や美術館への入館が今までのように営業できるようになるのは6月2日(火)以降を目途に検討中です。
スーパーマーケットやテイクアウトのみの食料品店、肉や魚の食材店、パン屋さん、パティスリー、薬局、郵便局、タバコ屋さんは営業可能。
とはいえ郵便局も全店が営業している訳ではなく、閉まっているところがほとんどで、営業していても通常よりも営業時間を短縮しています。
先日、私が郵便局に行った際には、どの支店も閉まっていてたらい回し状態となり、やっと切手を購入できたのはなんと4軒目でした。
メトロやバスの運行は間引き運転で、一部閉鎖されている駅もあります。
私のパートナーは、これまではストなどで本数が減っていた時でさえずっとメトロで通勤していましたが、新型コロナウイルスの問題が発生してからは、メトロ構内を駅員が万全にコントロールできない状態に。
ホームレスが乗ってきて乗客に財布を渡せと恐喝するなど治安が悪くなり、ついに電動キックボードを購入して、通勤するようになりました。
Q4. 休業補償はどのようなもの?
直近年度の売上高が100万ユーロ(約1億1,600万円)未満、従業員が10人以下の小規模企業や個人事業主、あるいはフリーランスが、新型コロナウイルスの影響によってやむなく休業せざるを得なくなった場合には、税務署のサイトから申請すれば1,500ユーロ(約17万4,000円)の給付があるそうです。
各企業に対しては、6月2日(火)までは出来る限りテレワークを継続するように、とのこと。ちなみに、業種ごとに33種類の新型コロナ対応マニュアルがあり、今後は60種類まで増やす予定だそうです。
Q5. 生活必需品で足りないものはありますか?
必需品というわけではないのですが、一時期、どの店でも卵と小麦粉が完売。
私の家の近所にある3軒のスーパーマーケットでは、1週間ほど小麦粉と卵が全く手に入りませんでした。
マスクと手の除菌ジェルは全く見当たりませんし、ある意味で「手に入らないもの」と思っています。
ちなみに、マスクは医療関係者や患者などに優先的に届くようにとの配慮から、処方箋がないと薬局で買えないという記事を目にしたことがあります。
これまでフランスでは「マスクをしても、感染防止の効果はあまりない」と伝えられてきましたが、それは恐らく全ての人にゆき渡るだけの十分な量がなかったため。
人々がマスクを求めて薬局に駆け付けてしまうせいでマスクを最も必要としている人々が使えなくなってしまうのを防ぐために、「マスクは特には必要ない」と言われていたとも考えられます。
現在は国内でのマスク生産量を5倍にまで増やし、今では週に1億2000枚のマスクを生産できるようにまでなったそうです。
5月11日(月)からは十分な量のマスクが供給されるようになるので、今後、交通機関を利用する際にはマスクの着用が義務づけられます。
また、5月11日(月)以降からは週70万件のウイルス検査を行う予定で、その検査料はすべて保険で保障してもらえるそうです。
2020.05.01(金)
文・撮影=原 正枝