50年代にタイムトリップするレトロな茶餐廳
香港では、数メートル歩けば茶餐廳に当たる。そして、どの店もメニューや雰囲気は似たり寄ったり。そんな中、香港人なら誰でも知っている名店がある。九龍半島・油麻地の廟街にある「美都餐室」。開業は戦後まもなく、60年以上の歴史がある老舗だ。年季の入ったテーブルといい、高い天井でまわるファンといい、昔ながらのモザイク模様の青いタイル壁といい、店内は50年代さながら。それが逆に、一般的な茶餐廳と比べるとモダンな雰囲気をかもしだしていて、趣を感じる。まるで映画のセットのようなレトロな内装(狙っているわけではなく、あくまでも開業当時のまま)で、香港映画やハリウッド映画のロケ地としても使われたことがあるのだとか。
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photographs:Pian Pang
茶餐廳よりもさらに時代を遡り、香港市民に愛されてきたものが、「冰室(ビンサッ)」と呼ばれる喫茶店。茶餐廳の原型ともいえる、飲み物と軽食だけを提供する店だ。戦後、富裕層に洋風の冷たい飲み物や軽食を提供していた冰室が、来客のニーズに応じてさまざまなメニューを作るようになり、やがて現在の茶餐廳へと変化していったのだという。
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photographs:Pian Pang
ビルの建て直しなどで、老舗の冰室は次々と廃業し、その歴史も幕を閉じつつある。ガタガタと音を立てていたレジスターも、黒光りする大きなソロバンを見る機会もずいぶんと減ってしまった。が、一方では、冰室スタイルのカフェが次々にオープンするなど、ここ数年の香港はレトロブーム。日本でも、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のヒットで昭和がブームになったように、香港でも、若い人たちの間でオールド香港が人気を集めているようだ。
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photographs:Pian Pang
2012.12.19(水)