香港の冬はそれなりに厳しい。12月~2月の間には気温が10度以下になる日もあるのに、建物に暖房が無く、湿度が高いために底冷えがするのだ。
季節感がないようで実はしっかりある香港の冬の味覚の代表格は、鍋、土鍋ご飯、珍しいものでは蛇料理などだが、他にも寒くなると自然と思い出すものがある。冬場が旬のサトウキビで作った蔗汁(サトウキビジュース)と蔗汁糕(サトウキビ餅)だ。
マンゴーやパパイアなど種類の豊富なフレッシュジュースに比べて蔗汁=サトウキビジュースは地味な印象で、ただの甘ったるい飲み物だろうと長年試した事もなかったが、気をつけて見れば、蔗汁や竹蔗(サトウキビそのもの)は街のあちこちで売られている。
伝統的な飲み物が淘汰される事なく、香港の人々の生活にしっかり根付いているのだ。
ギャラリーが集中するハリウッドロードの一角にある「公利」の店頭は一日中客が途切れる事が無い。自家製で無添加の蔗汁と蔗汁糕、身体に良い漢方茶などが人気で、そのすべてに効能書きがある。蔗汁も身体にいい飲み物とされるが、各々の主な効能は以下の通り。
蔗汁:滋養、コレステロール降下、胃腸の熱をとる
鶏骨草:肝臓の熱をとる
火麻仁:肝臓の熱をとる
五花茶:目に良い
亀苓膏:所謂亀ゼリー。デトックス他
香港人には、少し調子が悪いが医者にいくほどではない、と思ったらこういった漢方ドリンクや漢方薬を煮出して作った亀ゼリーで体調を整える習慣がある。
それだけでなく、ランチに高カロリーなものを食べ過ぎた人々も、身体の熱をとり胃腸、肝臓をケアするために店に立ち寄る。
何を飲むか迷った場合は、身体の調子を説明すればスタッフが症状に合った漢方茶を選んでくれる。
飲み易くするためかすべての飲み物はうす甘いため、私のような外国人にとっては健康的な甘味処、そんな印象だ。
金融街にほど近い場所柄、スーツ姿の香港人に連れられた外国人客も多く訪れる。
text&photographs:Miyuki Kume