CREA創刊の1989年に生まれ、2019年6月に30歳の誕生日を迎えた俳優の溝端淳平さん。

 20代半ばから舞台を主戦場にして研鑽を積み、演技に磨きをかけてきた溝端さんは 「早く30歳になりたかった」と語る。


「諸先輩がたから、男の20代後半はトンネルの時期。

 30代からがいちばん楽しいと聞いていましたし、実際に自分でも、20代半ばくらいから、フレッシュというほど若くはなく、大人の渋みを纏うには若すぎる……そんな中途半端さを感じていました。

 だから、早く30歳になってそこから脱したい、という思いが強かったですね」

 30歳になったのと同時に、民放連続ドラマでは8年ぶりとなる主演作が放送され、その怪演ぶりが話題となったばかり。鬼気迫る演技は、たゆまぬ努力の賜物だった。

「トンネルの時期にこそ演技を磨こうと思い、シェイクスピア、ハロルド・ピンター、アーサー・ミラー、寺山修司など、あえて難しい戯曲に挑戦し続けてきました。

 舞台にのめり込むようになったのは、24歳のときに出演した蜷川幸雄さん演出の『ムサシ』が大きなきっかけで、あの日からずっと、舞台で認められるように、もっと芝居がうまくなりたいと思ってもがいています。

 でも、やればやるほど悩みは尽きないです」

 役者人生の転機は何かと問われたら、迷わず『ムサシ』を挙げる。

 若者特有の尖った部分も、気づいていながらも認めたくない弱い部分も演出家の蜷川幸雄氏によってすべて丸裸にされ、自分と向き合うことを余儀なくされた。

「蜷川さんとの出会いは財産です。

 それに加え、『ムサシ』は、巌流島の戦いのあとも佐々木小次郎が生きていて宮本武蔵に復讐しにくるんだけど、報復の連鎖を断ち切って平和に生きようというメッセージ性のある作品。

 これを韓国で上演したときに、若い人たちが涙を流し、韓国と日本もこうあるべきだと感想を書いてくれて。

 最初は目立ちたいだけでこの世界に入ってきましたけど、僕らがやっているお芝居は、国境を超えてメッセージを届けることができる。それを生で感じたときに、芝居へのスタンスが確実に変わりました」

2020.01.28(火)
Edit=Miwako Yuzawa
Text=Yuki Imatomi
Photographs=Wakaba Noda(TRON)
Styling=Ryoh Kuroda
Hair & make-up=Mariko Sasaki

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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