新年を迎え、新しい趣味を始めようとしているあなたにおすすめしたいのは、日本が誇る文化に触れる歌舞伎鑑賞。
歌舞伎はハードルが高いというイメージを抱いている人も多いと思いますが、全国の映画館でデジタル上映される「シネマ歌舞伎」なら、料金も安く、気軽に歌舞伎を楽しめます。しかも、俳優の息づかいや豪華な衣裳の細部までも目にすることができるんです。
シネマ歌舞伎最新作の『廓文章 吉田屋』は、新年にぴったりなお目出度い演目。その魅力を、5つにしぼってご紹介します。
①片岡仁左衛門&坂東玉三郎
歌舞伎界のゴールデンコンビ登場
『廓文章 吉田屋』の主演は、歌舞伎界きってのゴールデンコンビである片岡仁左衛門さんと坂東玉三郎さん。お二人の円熟した芸と美しい姿を記録した2009年の歌舞伎座さよなら公演の舞台が上映されます。
仁左衛門さんと玉三郎さんは、1975年に共演した『桜姫東文章』で共演した際にそれまでにない色気と華やかさで観客を魅了し、当時仁左衛門さんが片岡孝夫を名乗っていたことから「孝玉ブーム」という言葉が生まれるほどの人気のある顔合わせ。
歌舞伎は演目が同じでも演じる俳優によって雰囲気などの印象が異なるので、今なお絶品とされるお二人の共演を目にすることができる貴重な機会です。
②すねたり痴話げんかをしたり
現代に通じる男女の心の機微
『廓文章 吉田屋』は、上方歌舞伎の代表的な作品で「和事」と呼ばれる柔らかくて艶のある風情や演技が求められます。
歌舞伎といえば、真っ先に顔に墨や紅で隈取りという化粧をした荒々しい江戸歌舞伎の「荒事」を思い浮かべると思いますが、江戸歌舞伎が豪傑なヒーロー物が多いのに対して、上方歌舞伎では庶民の生活に根付いた恋愛物が多く、それぞれの土地柄の好みが映し出されています。
仁左衛門さんが演じる伊左衛門は、まさに弱々しい色男の恋模様を描いたその代表格。
豪商・藤屋の息子なのに遊びが過ぎて親から勘当されて落ちぶれた生活をしていたのですが、玉三郎さん演じる恋人の傾城夕霧が心労で病気になったと聞いて、吉田屋へとやって来るのです。
吉田屋の店主からなかなか夕霧のことを聞き出せなくて不機嫌になったり、夕霧がちょうど吉田屋に来ていると知って喜んだり。実際に夕霧が目の前に現れてからも、会えて嬉しいという本心とは裏腹に、夕霧に対して意地悪な態度を取ってすねてしまう伊左衛門。
現代の人間にも通じる男女の恋心や機微が描かれていて、挙げ句の果てに痴話げんかをしてしまう二人を太鼓持が取り持って仲直りするというおかしみのあるところも上方歌舞伎ならではの魅力です。
2020.01.03(金)
文=山下シオン