「洲濱(すはま)」というお菓子をご存知でしょうか?
浅煎りの大豆粉を砂糖と水飴で練り上げたお菓子「豆飴」。
それを平安時代からのおめでたい紋様、浜辺の入り込みを意匠化した州浜形に作ったことから、「すはま」と呼ばれるようになりました。
![シンプルで美しい「洲濱」。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/2/-/img_b2dfb234fc167fd949d22d393b05845e180641.jpg)
きなこの香ばしさと砂糖と水飴の甘みの、素朴な味わいの洲濱は、祝儀の席にふさわしいお菓子として、京都を中心に、多くの人に愛されてきたのです。
かつて京都では、洲濱だけを作る専門店が何軒もあったそうです。最後の一軒、1657年創業の「御洲浜司 植村義次」が閉店したのは、2016年のこと。
![烏丸丸太町の『すはま屋』外観。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/-/img_f733be17acfb1d26e429e77b5ccfc942363748.jpg)
![店内には古いショウケースがそのまま置かれています。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/7/-/img_179b9d46ade48b5030186159788e6b45340710.jpg)
その「御洲浜司 植村義次」直伝の洲濱を作り、烏丸丸太町の同じ場所で「すはま屋」をオープンしたのは、芳野綾子さん。
![店主・芳野綾子さん。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/-/img_365004cf9e52bc6f77e3433ae00e7510341440.jpg)
![メニューは芳野さんの母親が手描き。取材時には可愛いお雛様の絵が描かれていました。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/5/-/img_45de71af2fa06de4163a9948c3d42abd291312.jpg)
「父が茶道の家元教授で、毎年、初釜で『御洲浜司 植村義次』さんの洲濱を使い、客人をおもてなししてきたんです。小さい頃から、端っこを食べるのがとても楽しみでした」と芳野さんはにっこり。
![「洲濱」は、お店では1本を9切にするのが基本。1切は幅約13mm。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/f/-/img_dfee3c32f37e20cc0b81e06d6c871e05168643.jpg)
「自分も大好きで、父親のお茶席に欠かせないお菓子が作られなくなるのはさみしい」と、大学生だった芳野さんは、植村義次14代のご主人に習い、何度も作ってお墨付きをもらいます。
ご主人にも勧められ、元の植村義次のお店を借りて2018年11月1日に開業。
「ごく自然に、気がついたらお店をやっていた」と芳野さんは微笑みます。
店の表の磨りガラスの文字も、店内に飾られた古い看板も、洲濱というお菓子の歴史を感じさせてくれるもの。
![扉の上の磨りガラスには「御洲濱司」の文字。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/6/-/img_760767c30e4bbf9183a591d99b1267ad121591.jpg)
![壁には古い看板が飾られている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/0/-/img_3008b87689aee5f88ededc8273e29047118235.jpg)
でも、店内は、お茶室のリフォームを多く手がけている女性設計士によって、すっきり今風に。
テーブル8席も設けられて、洲濱とコーヒーのマッチングが楽しめるオシャレなカフェになりました。
「私自身、コーヒーが好きだったんですが、植村義次のご主人もコーヒー好きで、洲濱とコーヒーの相性がいいと教えてくださったんです」と芳野さん。
![店内のイートインコーナー。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/4/-/img_d455a7a3b76d688d7344a35e28eaa4ee237077.jpg)
![お店の奥には坪庭も。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/e/-/img_fe0415bab627bdf1750cffc41f7de775384353.jpg)
2019.04.14(日)
文・撮影=そおだよおこ