「土ワイ」の売りは旅情とお色気
速水 ちなみに2時間ドラマのこうした研究ってどのようにされてるんですか?
大野 資料として、時代ごとのタイトルのデータベースを作ってます。こうしたテキスト解析は、よく社会学者がやったりしますけど。ちなみに「温泉」という単語の登場回数を比較すると、火サス8 対 土ワイ146という結果になります。
速水 土ワイと火サスはまったく別もの、一緒くたにしちゃいけないんですね。
大野 旅情とお色気は、老舗の土ワイが生み出した文化なんです。
速水 そうか。言われてみると火サスは、2時間ドラマのニューウェーブだった気がします。
大野 まず火サスは、女性に向けて作ったところが新しかったですよね。当時、まず火曜日の21時を主婦向けの時間帯として定義したんです。
速水 あ、うちがまさにそうでした。僕ら子どもを寝かしつけた母親がやっと一段落。まだ父親は仕事から帰ってこないのでゆっくりドラマでも観るか、という感じだったと思います。
大野 当時はまだテレビがメディアの王様で、どの番組もオールターゲットで作っていた時代です。主婦ターゲットという番組自体がまだ少なかった。
速水 主婦向けだと、昼のワイドショーとかですかね。
大野 そうですね。再現ドラマとかはワイドショー発の文化なので、近いものがありますよね。あと火サスは、女の人生をテーマにしたサスペンスを志向してました。探偵が謎解きをするのではなく、犯人の目線で人生を描くといった感じです。
速水 土ワイとの差別化で人間ドラマを目指したんですね。かなり鮮明に思い出してきました。
大野茂×速水健朗
2時間ドラマの歴史を探る
2018.10.14(日)
構成=速水健朗
撮影=深野未季
写真=文藝春秋
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