音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?
【次に流行る曲】
井上苑子「エール」
表現力も音楽の幅も広がり続けた1年間
伊藤 今回は、井上苑子の3rdシングル「エール」です。たしか彼女のことは、以前このコラムでも紹介したなって思って調べてみたら、2015年11月発売のメジャーデビューシングル「だいすき。」のタイミングで超フレッシュな井上苑子を取り上げていました。
山口 もう1年経つんですね。
伊藤 ですね。この時はツイキャスの女王だとか、等身大の女子リリック、同性の中高生に支持されていることを話しました。1年経った今でも相変わらずSNSを中心に広がりを見せているし、ジワジワきている感アリアリで、ブレイク前夜という感じですね。
山口 そうですね。同世代から支持されて注目されたということだけでなく、音楽的にも独特でアーティストとしての存在感が出てきました。
伊藤 2016年3月に高校を卒業して、12月には19歳になる彼女。この1年の彼女をみていて、確実にアーティストとして表現力も音楽の幅も広がっているし、井上苑子という唯一無二な世界観はそのままに、着実に階段を上っている。あとは大人になるということをどうプラスに向けていけるかがこれからのポイントになるんじゃないかな。
山口 そうですね。「お茶の間からの支持」という言い方は、ちょっと古いかもしれないけれど、彼女が目指すところは、一般的なポピュラリティでしょうね。
伊藤 ということは“目指せ紅白!”的な(笑)。こう言うと時代錯誤に思われるかもしれないけど、音楽業界において紅白歌合戦の存在感は今も健在だし、ビデオリサーチの視聴率調査によれば日本国民の3割以上が観ている高視聴率番組ですからね。残念ながら井上苑子は今年の紅白には選出されていませんが、2017年は可能性あるんじゃないですか。
山口 オリコンやレコード大賞など、旧態依然とした指標を元にしたAWARDは形骸化してしまっていますが、その中で「NHKが大晦日に行う歌番組」というブランドは、大きいですし、アーティストの人気が「一般化」する、マーケティング的に言うと「世の中ごと」になる一番わかりやすい基準になっている気がします。
2016.11.30(水)
文=山口哲一、伊藤涼