【次に流行るもう一曲】
欅坂46「世界には愛しかない」

ポエトリーリーディングという新機軸

伊藤 2曲目は欅坂46の2ndシングル「世界には愛しかない」。前作のデビューシングルでも意外性のある楽曲だったけど、今作も攻めてきたな! って感じ。

山口 僕はこの曲は素直に好きですね。

伊藤 世界観は「サイレントマジョリティー」からさほど変えてきていないけど、今回はポエトリーリーディングでよりディープな世界を作っている印象ですね。山口さんはこの曲、どういったところが好きなんですか?

ADVERTISEMENT

山口 個人的にポエトリーリーディング的なスタイルが好きというのもあるのですが、サウンドの質感も上品で、「長い黒髪の文学少女」みたいな感じがしませんか? オジサンとしてではなく、中二病的に清楚な少女に憧れているような。って俺が妄想分析しちゃってる?(笑)

伊藤 なんとなくわかります。まさに、そこが彼女たちの魅力なんでしょう。

山口 アイドルソングの枠を越えようとしているとも言えるけれど、日本のアイドルってなんでもありのオールジャンルのフォーマットになっているなと思います。加茂啓太郎さんがプロデュースしている「フィロソフィーのダンス」〈外部サイト〉も音楽性が素晴らしくて、一度、本コラムで楽曲を紹介したいと思っています。日本のアイドルファンって、握手したいだけでキャバクラの代用にしているみたいに決めつける人も多いけれど、実際は音楽が好きで、楽曲にこだわるような人も多いんですよね。

ADVERTISEMENT

伊藤 確かに。アイドルとひとことで言ってもいろんなタイプのアイドルがいますし、今どのくらいの女子アイドルグループがあるかわからないけど、これだけの数がいるなかで生き残っていくのは並大抵のことじゃない。そのためにビジュアルだけでなく、クリエイティブな部分でのアイデンティティが大切ですからね。そこでいうとまだ新人の欅坂46は、同じレコード会社の先輩グループ、乃木坂46の最近の流れを汲んでいる印象。ターゲットとして男性オタク層を全く意識していない、そうはっきり主張した楽曲なところが逆に結果として広いマーケットに支持され始めている。いままでアイドルなんて興味なかった人たち、とくにクリエイターたちの「乃木坂と欅坂は気になる」とか「乃木坂と欅坂は好き」って声をよく聞く。まぁクリエイターたちが彼女たちのCDを買っているとは思えないけど、今までになかった場所にバズを起こしていることは間違いない。

山口 山口ゼミ〈外部サイト〉受講生にも欅坂46への楽曲提供志望者は多いですね。伊藤さんしっかり指導して下さい(笑)。CWF(コーライティングファーム/山口が塾長、伊藤が副塾長を務める「山口ゼミ」修了生による、作曲家チーム〈外部サイト〉)メンバーはコンペでキープされたりし始めているし、もっと頑張って欲しいです。

伊藤 むちゃくちゃ欅坂46への楽曲提供志望者は多い。ビシビシやります!(笑)

欅坂46「世界には愛しかない」
ソニー・ミュージックレコーズ 2016年8月10日発売
初回限定仕様盤TYPE A・B・C[CD+DVD]1,528円、通常盤[CD]972円(税抜)
■デビューシングル「サイレントマジョリティー」に続く2枚目となるシングルの表題曲は、テレビ東京系ドラマ「徳山大五郎を誰が殺したか?」の主題歌。欅坂46は、現在、テレビ東京「欅って、書けない?」、日本テレビ「KEYABINGO!」、ニッポン放送「欅坂46 こちら有楽町星空放送局」と、3本のレギュラー冠番組を抱える。
■「世界には愛しかない」作詞/秋元康 作曲/白戸佑輔 編曲/野中“まさ”雄一
■オフィシャルサイトURL http://www.keyakizaka46.com/

【動画サイト】
「世界には愛しかない」

URL https://www.youtube.com/watch?v=83vyrFFjiqQ

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、コンテンツビジネス・エバンジェリスト、音楽プロデューサー。「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員。経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、バグ・コーポレーションを設立。音楽プロデューサーとしてSION、村上“ポンタ”秀一のマネージメントや、東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデュースする一方、音楽ビジネスとITに関する実践的な研究を行っている。プロデュースのテーマは、新しいテクノロジーの活用、グローバル展開、異業種コラボレーション。2011年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズし、プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成にも精力的に取り組む、異業種横断型のプロデューサー。近著に『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック)、『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・伊藤涼との共著)、『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・伊藤涼との共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 起業という選択』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)などがある。
Twitter https://twitter.com/yamabug
BLOG http://yamabug.blogspot.jp/
詳細プロフィール http://yamabug.blogspot.jp/2010/05/profile.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
https://www.facebook.com/lyric.laboratory/?ref=ts&fref=ts

Column

来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤

音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

2016.07.31(日)
文=山口哲一、伊藤涼