裸足で家を飛び出し街灯の下で…

阿川 「さっきの態度は何だ! どういうつもりだ!」って小突かれて、家の外に追い出された。夏だし、家だったから、私はアッパッパみたいな格好だったんですよ。ブラジャーも着けてたかどうか分からない。しかも、靴を履く暇もなく外に押し出され、ドアの鍵をガチャガチャって締められちゃった。

近田 実力行使されたんだ。

阿川 でも、私は試験勉強をしなきゃならない。上を見上げたら、夏だったから、私は自分の部屋の窓を開けっ放しにしていた。玄関から柱伝いによじ登ったら、部屋に入れたんですよ。

近田 忍者みたいだねえ(笑)。

阿川 でも、出てけと言って追い出した娘が家の中にいたら、父はもっと怒るだろうと思ったから、財布とかテキストとか辞書とか、頭陀袋に荷物をまとめて、窓から下に降りたんですよ。玄関は通れなかったから、靴は取りに行けなかった。

近田 裸足のまんまだったんだ。

阿川 最初は、家の近くの街灯の下で勉強してたんです。でも、蚊とか虫が集まってくるんで、落ち着かなくって。

近田 夏場の夜に野外で勉強するのはさすがに無理があるよ。

阿川 それで、坂の下にあった公衆電話から、市ヶ谷に住んでいる仲のいい友達に電話したんです。事情を説明して、「父が出てけって言ったから出てきた」って。そしたら、「おいでよ」って言うから、田園都市線と東横線を乗り継いで、渋谷に着いた。そこまで来たら、すごく人が多くなったんで、裸足でいるのが急に恥ずかしくなっちゃって。

近田 そりゃあ、裸足じゃ目立っちゃうよね。

阿川 で、お財布を覗いて、これから何日家に帰れないか分かんないけど、とりあえずタクシーに乗るしかないぞと思って、車を拾って市ヶ谷に向かったんです。友達の家に着いたら、まずはお母さんが出てきて、「とりあえず雑巾で足拭きなさい」って怒られた(笑)。

近田 相当珍しいタイプの来客だよ。

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