池袋西武で注目を浴び、モデルに

安野 ええ。もう、虜になっちゃいました。それ以来、自分の着る服の趣味もすっかり変わっていった。

近田 その頃、俺たちと出会い、フルーツを腰からぶら下げたわけね。

安野 そして、池袋西武にはチャラっとした変な女の子がいるという噂が広まって、こぐれひでこさんとも知り合うことになった。それをきっかけに、ひでこさんの旦那さんであるフォトグラファーの小暮徹さんが、小学館の雑誌のモデルに素人の私を起用してくださったんです。あの時のスタイリストは、プラスチックスのヴォーカリストとしても活躍していた佐藤チカさんでした。

近田 ちょっとしたシンデレラストーリーだね。

安野 そこから、ひでこさんと徹さんのお宅にも出入りするようになり、一気に人間関係が広がっていきました。そうこうするうちに、東京の空気に染まってまいりまして(笑)。

近田 西武にはどのぐらい在籍してたの?

安野 2年ぐらいですね。2CVへの想いが募って働きたいと思い始めたんですが、入るためには何か手に職を付けた方がいいだろうと考え、パタンナーを目指し、恵比寿にあるバンタンデザイン研究所に入学したんです。

近田 殊勝だね。技術は身についた?

安野 あんまり身についてない。何となく仕組みが理解できた時点で、あとは経験を積めばいけるんじゃないかと思って、バンタンに通うのを早めにやめちゃったんです。

近田 システムを理解するってことが一番大事だからね。行ってよかったと思うよ。

安野 そして、憧れの2CVに入社が叶い、最初は渋谷にあったパルコPart2の2CVの店舗で店員を務め、その後、本社で営業の仕事に就きました。

近田 こないだ、安野は営業の才能があったって、ひでちゃんが褒めてたよ。パタンナーにならなくて、結果としてはよかったかもしれない(笑)。

安野 ところが、数年経ったら、ひでこさんが2CVを解散しちゃったんです。

近田 そこから、また別の運命が動き出すわけだよね。

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安野ともこ(やすの・ともこ)

1959年、埼玉県生まれ。高校卒業後、西武百貨店勤務を経て、こぐれひでこ氏が主宰するアパレルブランド「2CV」に入社。同社解散後、モデルやシンガーとして活動。以降、フリーのコラムニスト、ライター、プランナーなどを務め、小泉今日子との出会いをきっかけに、スタイリストに転身する。1994年には、スタイリスト事務所「CORAZON」を設立し、衣装デザインにも進出する。2007年、ジュエリーブランド「CASUCA」を立ち上げ、現在、目黒で実店舗「CASUCA HISTORIA」を展開。6月7日(日)から上演される「PARCO PRODUCE 2026 カッコーの巣の上で」では衣装を担当。
Instagram  @yasunotomoko

近田春夫(ちかだ・はるお)

1951年東京都世田谷区出身。慶應義塾大学文学部中退。75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。その後、ロック、ヒップホップ、トランスなど、最先端のジャンルで創作を続ける。文筆家としては、「週刊文春」誌上でJポップ時評「考えるヒット」を24年にわたって連載した。著書に、『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトルモア)、『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』『グループサウンズ』(文春新書)などがある。最新刊は、半世紀を超えるキャリアを総覧する『未体験白書』(シンコーミュージック・エンタテイメント)。
X @ChikadaHaruo

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