ミュージシャンとしてのみならず、幅広いジャンルで活躍してきた近田春夫さんが、半世紀を超えるそのキャリアにおいて親交を重ね、交遊してきた錚々たる女性たちとトークを繰り広げる対談シリーズ「おんな友達との会話」。

 5人目のゲストは、安野ともこさん。小泉今日子さん、役所広司さんをはじめとする錚々たるビッグネームのスタイリストを務め、現在はジュエリーブランド「CASUCA(カスカ)」のディレクションを手がける彼女の幅広い活躍の軌跡を追う。


「近田さんに、フルーツのオブジェを腰に下げろ、と言われ…」

安野 近田さんは、私の人生の扉を開いてくれたといっても過言ではない大恩人なんですよ。

近田 えっ、そうなの? そもそも、安野が俺と最初に会ったのっていつだっけ。

安野 私が池袋の西武百貨店に勤めてた頃だから、多分、1978年。近田春夫&ハルヲフォンが、デパートの売り場でライブをするという企画があったんですよ。

近田 ああ、あの頃、西武の館内に「シティ」っていうイベントスペースがあってさ、そこでよく僕らのバンドはライブをやってたのよ。その延長かね。

安野 4階に「ウエストビレッジ」っていう売り場があって、そこは、文化屋雑貨店とか、一つ目小僧とか、5坪ぐらいの小さなテナントがたくさん集まった独特のコーナーだった。しょっちゅうイベントもやってて、店員自らがギターを弾いて歌ったりしてたんだけど、そこにハルヲフォンがやってきたんです。

近田 ちょうど、僕らのバンドがパンクに傾斜を深めた時期だよね。

安野 その日のイベントも、テーマはパンクだった。ダンサーとして駆り出された私は、髪の毛を立てて、パンクのファッションを身にまとってたんだけど、近田さんから、「君、そのままじゃ面白くないから、文化屋雑貨店に置いてある大きなフルーツのオブジェをたくさん網に入れて、腰からぶら下げなさい」って指示されて。

近田 そんなこと言った? 全然覚えてない(笑)。

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