引っ越しは、気持ちとモノの棚卸し

――ライフスタイルの大きな変化として、関西へのUターンについて描かれていますが、引っ越しは生活全般を見直すきっかけになりますよね。

 そうですね。引っ越しは、気持ちとモノの棚卸しができるんです。場所が変わると、仕事への向き合い方とか、生活のリズムにも客観的になれるので。東京で長く暮らしたぶん、当たり前になっていたことも多く、そのひとつが「とにかく働かないといけない」という意識でした。引っ越しを機に、仕事のしかたを見直したかったし、関西に住んでいたのは学生までだったので、自分で働いて、お金や生活の管理をできる状態で住んだらどうなるんだろう、という興味もありました。

 ごきげんに暮らすという点で効果的だったのは、余裕を持って物事に向き合えるようになったこと。地元であることも関係していると思うのですが、多少気持ちがほぐれたような気がしています。働くことは基本的に好きなのですが、それと同等に、遊ぶことや休むことも大事に思えるようになりました。

――余裕を持てたほうが、仕事にもいい影響が生まれたりしますよね。

 本当にそう思います。特にこういうエッセイは、自分がそのまま出てしまうので。関西に移住すると決めてから、本のしあがりというか、描くものも変わってきた気がします。自分にしかわからないくらい、些細な部分ではあると思うのですが。

――ダイニングテーブルや食器、調理道具など、あこがれを生活に取り入れる楽しさも伝わってきました。

 好きなものやあこがれるものは、20代からあまり変わっていないのですが、「まだ早い」と思い続けて、ずっと買っていませんでした。もう40歳だし、「いつか」を実践していいんじゃないかなと思って。長く愛されているようなものって、見た目も使い勝手も格段に違うし、ほしかったものを自分で選んで、家にあるっていうことでもごきげんになれるんです。

――ファッションや美容など身だしなみについても、無理をしない楽しみ方、遊び心が印象的でした。

 このふたつは好きなのだけど、自分にとってのちょうどよさがわからず、失敗しがちな分野としてずっと苦手意識がありました。それこそ昔は、自分が変われるかもっていう期待も込めて、セールのときにたくさん服を買ったものの、ワンシーズンしか着なかったりとか……。だけど今は失敗が少なくて、金額もお手頃な小物などを少しずつ取り入れてみようと思い始めて。選び方で変わったと思うのは、肌触り、デザイン、動きやすさなど、身につけて心地よさを感じるものにお金を使うようになったこと。流行っている色やデザインでも、似合わないと思ったら買わないとか、そういう判断力も昔はなかったので。

 30代の頃は、エッセイに「ファッションや美容のトピックを入れましょう」と編集さんに提案されても、「私が描けることは何もないです!」と逃げていたんです(笑)。でも最近は、ちょっとずつですけど前向きに楽しめているので、こうやって描くことができて、いい変化だなって思っています。

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