「詩はあふれるように湧いて出てきていたんだ」
二〇一二年に神戸に移住し、翌一三年には京都にも住まいを構えた松本さん。「なぜ京都に?」という問いには、東京がイヤになったから、という答えがよく返ってくる。でも、今回の“京都さんぽ”で、その「なぜ」をもう少しわかりたい、とわたしは考えていた。
まずどこへ行きますか、と松本さんに聞くと、「京都会館だね」と即答した。
一九七〇年。アルバムデビューを果たしたはっぴいえんどは多忙を極めていた。自分たちの活動に加え、岡林信康のバックバンドの活動も並行して始まったので、楽器を抱え北へ南へと列車移動する日々が続いたのだ。
「でも忙しいけど、詞はあふれるように湧いて出てきていたんだ。だから、移動中の列車で書くこともあったよ」と松本さん。「はっぴいえんど単体のコンサートが青森であった、その帰り。列車から雪景色を眺めていたら言葉が浮かんできたんだ。当時、特急列車には食堂車がついていて、白いクロスのかかったテーブルの上には紙ナプキンが置いてあった。それに急いで書き留めた。で、大滝さんに渡したんだ。曲つけてみてって」
黝い煙を吐き出しながら
白い曠地を切り裂いて
冬の機関車は
走ります
きみの街はもうすぐなんです
ゴオ
ゴオ
ゴオ
と
雪の銀河をぼくは
まっしぐらなんです
「抱きしめたい」
(作詞:松本隆 作曲:大滝詠一)










