外の気温は30度なのに、スタジオには雪が……

――あの曲のミュージック・ビデオもとてもかっこよかったです。ところで、『風林火山』では、香港のコーズウェイベイ(銅鑼湾)に雪が降っているという印象的な場面がありました。あり得ない設定ですよね。SF的というか、パラレルワールドというか。

 監督であるジュノからその設定を最初に聞いた時は大胆だなと思いましたが、この映画の香港は、現実の香港とは違う世界線に存在するので、かえってそのアイデアをすごく気に入りました。

 撮影のほとんどはとても暑い時期に行っていたんです。銅鑼湾は巨大なセットで再現していたので、外の気温は30度もある暑さなのに、スタジオの中では雪が降っていて寒そうにしないといけない。

 ただ、僕が出ている“ある銃撃シーン”だけは外で撮らなくてはならず、実際に寒冷地でロケをしたんですね。マイナス20度くらいの過酷な環境で、ものすごく大変でした。そこで1週間ぐらい撮影をしていたんですよ。

――ああ、そこだけは本物の雪だったんですね。どこで撮ったんですか?

 韓国です。

――なるほど、そうでしたか。ところでルイスさんが演じるのは、スーパークールなキャラクターの殺し屋、チン・マンシン(程文星)です。『風林火山』は人々が殺し合う、かなり救いのないお話ですが、こういう世界観がお好きなんですか?

 あくまでフィクションですからね。演じるキャラクターが面白かったですし、結末が云々というのは、私はあまり関係ないと思っています。そして、やはり映画の世界観は監督が選択するものですから。

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ルイス・クー Louis Koo(古天樂)

1970年10月21日生まれ。香港出身。ジョニー・トー監督作品の顔として『柔道龍虎房』(2004)、『エレクション 黒社会』(2005)、『エレクション 死の報復』(2006)、『独身の行方』(2011)、『高海抜の恋』(2012)、『ドラッグ・ウォー 毒戦』(2013)など、犯罪映画からラブコメまで多くの同監督作品に出演。このほか、『オーバー・サマー 爆裂刑事』(1999)、『恋するブラジャー大作戦』(2001)、『アクシデント』(2008)、『レクイエム 最後の銃弾』(2013)、『未来戦記』(2022)、など出演作多数。プロデューサーとしても活躍。長年、無冠の帝王と言われていたが『SPL 狼たちの処刑台』(2017)で香港のアカデミー賞と言われる金像奨で、主演男優賞を受賞した。