あの名品たちは安易な進化をせずに新名品を生んだ
右:多重層リポソームを新しい角度から研究して生まれた、新次元の化粧水。リポソーム トリートメント リキッド 170mL 10,000円(2015/9/16発売)/コスメデコルテ
今やある種“習慣化”している化粧品のリニューアル……。正直そこには私たちの気持ちがもうあまり動かなくなっている。中にはブランドの威信をかけた“本モノの劇的進化”もあるけれど、それが見分けられないほど“進化”は生き残りの常套手段になっているのだ。
逆を言えば、スキンケア界を代表するような“重要なロングセラー”は、中途半端な進化などしなくても、今尚ファンを増やし続けていたりする。正真正銘の名品だ。たとえば、コスメデコルテのモイスチュアリポソーム。業界初の多重層リポソームで次元の違う保湿力をもたらし、すでに発売から23年を数えるが、未だベストセラーであり続け、これを超える保湿セラムは現れないかもという、奇跡的な名品……。
こういう傑作に限ってファミリー化もあまりされていなかったりする。でもだから逆に、“モイスチュアリポソームの化粧水が欲しい”という声が絶えず、そこに応える形でついに誕生したのが、リポソームのローション。しかし単に“多重層リポソームを搭載した”というだけでは、プライドが許さないのだろう。“歴史的な発見”をひっさげてのデビューとなった。それは角層に貯水槽があったという発見。単に日々のしっとり感だけじゃない。老けて見えるか若く見えるかという、決定的な美しさの差を生む貯水槽=肌内キャパシターのサイズを大きくする効果を備え、最強のローションとして超ロングセラーのDNAを受け継いだ。
右:1990年上陸きらめくパールが海の恵みを放出。スキンキャビア 50mL 20,500円/ラ・プレリー
そしてやはり世紀のスーパーロングセラーとなったラ・プレリーのスキンキャビアも今年、デビューから25年になるが、そのDNAを受け継ぐ形で改めてデビューを果たしたのが、コンシーラーとファンデーションの2段重ね。これもラ・プレリーの発明だ。引きしめやハリ弾力をもたらし、キャビア独自の効果をプラスして、スキンキャビアの存在感を見せつけた。
2015.09.02(水)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫