ラマダン中の夕食。最初のひと口はデイツから

 ラマダン中は、日が明ける前に朝食。日没後は、断食で縮こまった胃を活性化させるためにまず水を飲み、次に栄養価の高いデイツ(ナツメヤシ)を食べてから、夕食です。夕食のメニューに決まりはないですが、野菜、魚、肉などバランスのいい食事が好まれるようです。

左:パサー(市場)で販売していたナシアヤム(マレー系のチキンライス)。ラマダン明けにすぐ食べられるようお弁当スタイルで。これらの料理は、ラマダンをしていない異教徒が購入してもOK。ただし、日が暮れる前に食べる時はラマダン中の人に配慮していただこう。
右:ラマダン中のパサーは普段より食事のメニューが多く、この時期限定の伝統料理も並ぶ。また、イスラム教徒はラマダン中でも普段どおりに仕事をする。たとえレストランのスタッフや屋台の販売員であっても。ただちょっぴり省エネモードではある。
ラマダンの時期は、町やショッピングセンターがラマダンのテーマカラーである緑色に染まる。国を挙げて、マレー系にとって神聖な月を祝うと同時に、活気あふれる夜の消費を促している。(写真提供:やかべっち)

 以前ちょうどラマダン中の夕方にショッピングセンターのフードコートにいたことがあります。友達同士や家族で、1日のラマダン明けを待つ人々。彼らの目の前には、ゆうに30分以上も前に注文した料理が置かれていました。はたから見ると、麺はのびるし、ご飯は冷たくなっちゃう……と思うのですが、本人はいたって平気。日没を知らせるアザーンの声が流れてくると、みんなうれしそうにご飯を食べ始めました。

 その姿をみて、あぁそうなのか、と。1日の断食を終え、貴重なごはんを味わう。そのおいしさは、ちょっと麺がのびてようが、ご飯が冷たかろうが、そんなことはどうでもよくて、心と身体に沁みわたる格別の味。その味を体験できるのは、断食をした人たちだけなのです。

 そして、30日間のラマダンの行が終わると、ハリラヤ・プアサがやってきます。イスラム教徒にとって1年で最大のお祭り。正真正銘のごちそうが並ぶ月です。

※現地のホテルのレストランで開催されている「ラマダン・ビュッフェ」の様子を動画で紹介しています。3ページ目をお見逃しなく!

2015.06.28(日)
文=古川 音
撮影=三浦奈穂子、古川 音