ごちそうを中心に人々が集うハリラヤ

ハリラヤは家族や親せきが一同に集まり、みんなでごはんを食べる。手料理を持ちより、おしゃべりに華が咲く。(写真提供:シャヒルさん)

 ハリラヤには、オープンハウスを開催。オープンハウスとは、親せきや近所の人、お世話になっている人たちを自宅に招待し、みんなでごはんを食べること。誘われたら、イスラム教徒でなくても参加することができます。ちなみに、マレーシアの首相もオープンハウスを開催していて、予約なしで誰でも参加可能。首相と握手することもできます。聞くところによると、首相のオープンハウスでは10万人分の料理が無料で提供されるのだとか。

左:コタバル出身のシャヒルさんのオープンハウスの様子。炭火でサテーを焼いて提供していて、さながら屋台のような雰囲気だが、料理はすべて無料で提供。
右:女性が持っている右の皿は、お米を麹菌で発酵させた「タパイ」。左の皿はもち米を葉っぱで包んだ「クトゥパ」。どちらもハリラヤには欠かせない味。(ともに写真提供:シャヒルさん)

 さて、ハリラヤには、いくつか大事な料理があります。その代表格が、前回のちまきの回で紹介した「クトゥパ」です。

左:「クトゥパ」。葉を剥くと、餅のようにギュッと固まったご飯が現れ、サテーやお肉の煮込み料理と一緒に食べる。
右: ヤシの葉で生米を包み、薪の火で沸かした熱湯で1時間ほど茹でて作る。

 ハリラヤには大勢の人が家に訪れるので、前日は家族みんなで料理の仕込み。ちなみに「クトゥパ」は、マレー半島の北部はもち米、南部はうるち米を使います。

 もうひとつは「レマン」。竹筒にもち米と少量のココナッツミルクを入れ、炭火で2~3時間じっくり炙った料理です。竹をパカーンと割ると、筒状のもちもち飯がドン! やわらかくもっちりと炊き上がったご飯は、ふわっとココナッツミルクの甘い香りがして絶品。“もちラー”の私の大好物です。

「レマン」は、干し海老を甘辛く味つけしたふりかけ状のものと一緒に食べる。めちゃうまい。
ジョホールのアイルヒターで販売していた「レマン」。人気料理なので、最近ではハリラヤ以外の時期にも提供されている。

 そして、こちらもハリラヤに欠かせない味。「クエラヤ」と呼ばれるお菓子です。家で作ったり、パサーで買ったりして、クッキー、ケーキ、ゼリーなどをトータルで5~10種ほど用意します。マレーシアのお祭りには、甘いお菓子が必須なのです。

左:パサーにずらりと並ぶクエラヤ。どれを食べてもおいしい。
右:粉砂糖をまぶしたサクサク食感のクッキーから、パイナップルタルト、砕いたピーナッツたっぷりのほろほろ食感まで種類豊富。

 ラマダンを体験して感じたのは、いつも何気なく食べているごはんのありがたさ。そして、家族、友人、大事な仲間など、できるだけ大勢の人と食事を囲むことの大切さ。話すことが無くても、無理に言葉を交わさなくてもいいんです。ひとつの食卓を囲み、みんなで一緒にごはんを食べる。それがいちばん大事。

 2015年は6~7月がラマダン。日没後、人々が笑顔で集う屋台の様子が目に浮かぶようです。

ラマダン中のマレーシアは、日が沈んだあとが本番。レストラン、屋台に人が集まり、にぎやかに夕飯を楽しむのです。マレーシアごはんの会・事務局のやかべっちが紹介するのは、コンコルドホテル・シャーアラムの「ラマダン・ビュッフェ」の様子。カラフルな甘い飲み物から、カレー、サテー、鶏・魚・羊の丸焼き、カレー、お菓子、果物まで、豪華な料理がずらり! 料金は118リンギット(約4,500円・税別)/大人、19:00~22:30にて開催中。

マレーシアごはんの会 古川 音(ふるかわ おと)
「マレーシアごはんの会」にて、マレーシア料理店とコラボしたイベント、マレーシア人シェフに習う料理教室を企画・開催。クアラルンプールに4年滞在した経験をもち、『ニッポンの評判』(新潮新書)のマレーシア編を執筆。マレーシアごはんの会の活動のほか、情報サイト「All About」でのマレーシアライター、食文化講演も担当している。
オフィシャルサイト http://www.malaysiafoodnet.com/

 

Column

マレーシアごはん偏愛主義!

現地で食べたごはんのおいしさに胸をうたれ、風土と歴史が育んだ食文化のとりことなった女性ふたりによる熱烈レポート。食べた人みんなを笑顔にする、マレーシアごはんのめくるめく世界をたっぷりご堪能ください。

2015.06.28(日)
文=古川 音
撮影=三浦奈穂子、古川 音