愚痴をこぼした記者をなだめるティム・ロス

CSの映画専門チャンネル、ムービープラスのカンヌレポーターであるウオ子ちゃんとマダムアヤコ(腕が太い方)は、レッドカーペットで外国人カメラマンに写真を撮られたぞ。どっかに掲載されたんだろうか。

 日本から自腹でカンヌに行っている私のようなフリーランスの評論家やジャーナリストには、日本作品が選出されると仕事が増えるので、有り難いのは確か。さらに毎年カンヌに行き続けるにはプレスにも厳しい審査がある(カンヌのプレスパスのランク付けについては、去年のコラムで書いたので、詳しくはこちらをお読みくださいませ)。

招待作品『マッドマックス 怒りのデスロード』の記者会見。左から、ニコラス・ホルト、シャーリーズ・セロン、ジョージ・ミラー監督、トム・ハーディ。

 基本的には記事をたくさん書いた方が評価はあがるため、話題が多いのはやっぱり有り難い。ただ一方で上記のような矛盾も生じてしまう。と、わざわざカンヌへ来てまで、売れっ子になりすぎて書く時間がないと嘆く作家みたいなことを言ってみる。

脚本賞を受賞した『Chronic』に主演したティム・ロス(中央)と、その右隣がミシェル・フランコ監督。

 合同取材で、似たような愚痴を言ったイギリス人ジャーナリストが「自腹で来てるっていっても、それが君らの仕事だろ。がんばれよ。オレだって子供を良い学校に行かせるんで、大変なんだよ。でもようやく大きくなったから、金にならない仕事をする余裕も出来てきたけどね」とティム・ロスに言われていた。まあ、こんな話が聞けるから、カンヌに来る甲斐があるってもの。

今年のアイコンはスウェーデンが生んだ大女優イングリッド・バーグマン。彼女の娘イザベラ・ロッセリーニが「ある視点」部門の審査委員長だった。

 そんなこんなでクレージーだったが、やっぱり面白かった今年のカンヌの華やかな話題は、次回以降にお届けします。しばしお待ちを。

石津文子 (いしづあやこ)
a.k.a. マダムアヤコ。映画評論家。足立区出身。洋画配給会社に勤務後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。映画と旅と食を愛し、各地の映画祭を追いかける日々。ときおり作家の長嶋有氏と共にトークイベント『映画ホニャララ はみだし有とアヤ』を開催している。好きな監督は、クリント・イーストウッド、ジョニー・トー、ホン・サンス、ウェス・アンダーソンら。趣味は俳句。俳号は栗人。「もっと笑いを!」がモットー。