ポン・ジュノがプロデュースを手がけた心理スリラー

ちょっと眠たげなユチョンだったが、韓国人記者3人からの質問に真摯に答えていた。

 とっくにアカデミー賞も発表となり、そろそろ5月のカンヌ映画祭の話題も聞こえるようになったけれど、しつこく2014年10月の釜山国際映画祭について。

 そのアカデミー賞外国語映画賞の韓国代表だったのが、『殺人の追憶』『グエムル』のポン・ジュノがプロデュースを手がけた『海にかかる霧』(原題:海霧/ヘム)。最終ノミネート5本からは漏れてしまったが、25人の密航者が死亡した実際の事件を元に、逃げ場のない海で極限事態に陥った船員たちの心理を掘り下げた怖い、怖い映画で、JYJのユチョンの本格映画デビュー作となった。監督は『殺人の追憶』の脚本を手がけたシム・ソンボ。

 ユチョンはレッドカーペットにこそ登場しなかったが、釜山では俳優パク・ユチョンとして10月3日午後に海雲台(ヘウンデ)ビーチで単独でのオープン・トークと、劇場で『海にかかる霧』の出演者たちと舞台挨拶、さらにもう一度ビーチで舞台挨拶と、映画ファンの前に3度も登場し、集まった人々を喜ばせた。

海雲台ビーチを埋め尽くす人だかり。この年の映画祭イベントの中で、一番盛況だった。

 オープン・トークは釜山映画祭の人気企画で、1時間にわたって海辺でじっくりと話を聞くもの。今までも木村拓哉、イ・ビョンホン、トニー・レオンらそうそうたるメンバーが登場したが、今回は『俳優の誕生 パク・ユチョン』と題して行われ、ユチョンが演技に対する思いを語った。

 ステージにあがったユチョンは若干、顔が腫れぼったいかな、と思ったら「実は昨夜、先輩俳優であるクァク・ドウォンさんと飲んでいました」と照れ笑い。釜山では映画人が集まりビーチ近くの居酒屋で、夜な夜な飲みながら語り明かすのがお約束なので、早速その洗礼を受けたらしい。ユチョンも映画人の仲間入りをしたというわけだ。

 『海にかかる霧』では漁船の新人船員ドンシクを演じ、青龍映画賞をはじめ新人賞を独占するほど高い評価を受けた。歌手が演技をする必要性があるのか、ということについて「歌手が演技をしている、という先入観をどうはねのけるのか。プレッシャーはかなりありました。パク・ユチョンがなぜ演技をしなくてはいけないのか、わかってもらわないといけない。でも演技をすることは音楽にも役立っています」と答えたユチョン。

2015.03.26(木)
文・撮影=石津文子