ファーストクラスの機内食はどこがどう違う?

季節の小皿 五彩。左手前の龍吟名物黒トリュフのおからから時計回りに、煮穴子と風呂吹大根、厚焼き卵、雲子の南蛮蒸し、小柱の辛子酢味噌和え。

 空の旅の楽しみのひとつ、機内食。ファーストクラスともなれば、飲み物も料理も最高級のものが揃っている。今回利用したJALニューヨーク便では、和食は六本木の名店「日本料理 龍吟」の山本征治シェフ、洋食はフランスの3ツ星レストランで腕を磨いた「エディション・コウジシモムラ」の下村浩司シェフ、アラカルトはパリを拠点に活躍している狐野扶実子シェフが手がけていた。JALがスカイ オーベルジュと称する食事を支えるドリームチームだ。

国産桧の端材を使った箸は、握りやすいようにカーブが付いたユニバーサルデザイン。持ち帰って使えるクオリティだ。

 どの料理もおいしそうで、メニューを見ながらかなり悩んだ。食前酒として「サロン 2002」をいただきながら。なんともぜいたくな時間だ。洋食のメニューには、キャビア、フォアグラ、トリュフ、オマール海老など。いっぽうの和食もトリュフ、伊勢エビ、キャビアなどが使われている。悩んだ挙げ句に選んだのは和食。世界一周の旅をする向こう1カ月半、おいしい和食には出会えないと思ったから。最初に運ばれて来たのは、季節の小皿 五彩。木の葉をあしらったお盆に載った少しずつの上質な小皿は、品のいい薄味で、どれもシャンパンによく合う。

和食のコースの途中に、洋食メニューのキャビア! そんなわがままが許されるのはファーストクラスならでは。

 ここで、洋食も捨てがたいと選びあぐねていた私に、CAさんが「キャビア、召し上がりませんか?」と、洋食の前菜を勧めてくださった!「いただきます!!」と即答すると、カリフラワーのヴルーテ(フランス料理の基本ソースのひとつ)、ボタン海老の塩水マリネミント風味とともに、まるごと1瓶のキャビア。メゾンカイザーのパンに載せながら最後の一粒まで完食してしまった。

左:「サロン 2002」とアミューズ。この後、もう1種類のシャンパン「フィリポナ クロ・デ・ゴワセ 2004」もテイスティングさせていただいたが、「サロン 2002」の奥深さにはかなわなかった。
右:ワインのようなボトルに入った高級茶「ロイヤルブルーティー」。ワイングラスで香りも楽しみながらいただく。

 シャンパングラスが空いたところで勧められたのは、ワインのようなボトルに入った、話題の高級茶「ロイヤルブルーティー」。機内での仕事を抱えていた私は、「残念だけれどワインは控えめに」と伝えたのだった。ワイングラスで飲むお茶は、まろやかな口当たりとほんのり甘くてフルーティなアロマが鼻腔をくすぐるものの、食事の味は邪魔しない素晴らしいお茶だった。

左:お椀の、蕪のすり流し仕立てはこのとろみ! 品のいい出汁が食欲をそそる。
右:海の幸たっぷりの卵豆腐と、イカと伊勢海老のぜいたくキャビア仕立て。

 続いて「蟹真蒸の椀 蕪のすり流し仕立て」。このとろりとした食感の温かいお椀が機内で出されることは感動ものだ。続いて、海の幸たっぷりの卵豆腐とイカと伊勢海老のぜいたくキャビア仕立て。またしてもキャビアだ。野菜の上に載ったキャビアのうま味とほのかな塩味が絶妙なハーモニーだ。

炊きたての南魚沼産コシヒカリのご飯と味噌汁、半熟卵を使ったすき焼き風ステーキ。機内でご飯を炊いているのはJALだけなのだとか。やっぱり炊きたてはおいしい!
すき焼きの生卵の代わりの半熟卵は、黄味がトロトロで絶妙!

 ここまででかなりお腹がふくれてきたが、ここで炊きたての南魚沼産コシヒカリのご飯と味噌汁、そして厚切り和牛フィレ肉のすき焼き。すき焼きと言っても火気厳禁の機内ではジュウジュウ焼くわけにはいかない。すき焼きの味付けを施された和牛に、なんと、半熟卵を載せるという工夫がなされていた。半熟卵のトロトロ加減も完璧だ。デザートのオリジナル「六本木ぷりん」は、ここまでの感動の締めにふさわしい味だった。

甘味3種。左から、ヨーグルトのアイスクリーム 金木犀の香りのジュレを流して、龍吟特製「六本木ぷりん」、龍吟黒豆松風~コニャック風味~。

2015.06.05(金)
文・撮影=たかせ藍沙