ヴォーカリスト・島袋寛子の魅力は…

 90年代末、Jポップのシーンにはディーヴァと呼ばれるシンガーがひしめいたが、ことヴォーカルの弾力性という点において、島袋寛子に並ぶ存在はいなかったと思う。昭和歌謡にまで視座を拡張すると、島袋寛子は、あの弘田三枝子の嫡子に当たるだろう。「Body & Soul」終盤のサビで彼女が畳みかける高揚感は、どうにもこうにも尋常ではない。

 SPEEDの唯一無二のハーモニーの素晴らしさは……などと、音楽ライターにありがちな常套句で無難に原稿をまとめようとしつつ、彼女たちのほとんどのレパートリーの作詞作曲を手がけた伊秩弘将のインタビューを検索してみたら、実は、SPEEDの楽曲には、ハモリがないのだという。音源を洗えば、確かにそうだ。これみよがしな和声によって感動を喚起することはなく、ユニゾンだけで、一途な青春を表現させている。

 なお、この稿を記すに当たり、改めてSPEEDの楽曲、特に中期以降を聴き直してみると、著名なヒットナンバーでも、始まった瞬間、「あれ、こんな曲だったっけ?」と不思議に思うことが多い。曲調が変わってサビにたどり着くと、「ああ、俺の知ってるこの曲だ」と膝を打つのだが、そのぐらい、別の曲想に基づいた断片を無理繰りくっつけたのではないかと感じる構成が多いのだ。これは、アップルの楽曲制作ソフト、プロツールスの導入以降の環境がもたらしたものであると思われる。

 そして、2000年の3月末に、SPEEDは電撃的に解散する。その後、何回か散発的に再結成が行われるのだが、2008年の本活復活以降、2010年代に入ってからはデクレッシェンド気味に活動が失速していく(2013年には新垣が事務所との契約を終了している)。さりとて、解散宣言は行われていないので、SPEEDは一応、現存しているのだ。なお、2015年には、今井と島袋の2人がERIHIROなるユニットを結成、シングル「Stars」をリリースしている。

 ここ数年の紅白歌合戦は、矢沢永吉やB’zなど、レジェンドの再評価の場となっている。SPEEDこそ、そろそろ紅白の目玉にふさわしいのではないか。

 まあ、今井絵理子が与党の参院議員であったり、上原多香子が度重なるゴシップの主役となっていたりと、なかなか再結成しづらい条件があることは理解できるが、成熟した4人が揃ったパフォーマンスを、もう一度観てみたい。