「THE夜もヒッパレ」でお披露目された4人

 後にSPEEDと呼ばれることとなる4人は、1995年11月、日本テレビで放送されていた人気の音楽番組「THE夜もヒッパレ」でお披露目された。グループ名は番組内で公募され、最終候補には「SPEED」と「沖縄チャキチャキ娘」が残ったという。もしも沖縄チャキチャキ娘と名付けられていたら、まったく違う運命をたどったことだろう……。

 SPEEDという名前を提案した応募者にも、これを採用した運営の側にも、90年代ならではの一匙ほどの露悪は込められていたように思う。何しろ、スピードとは、覚醒剤を表現する隠語の一つであり、このグループのバックグラウンドであるダンスカルチャーの現場とは密接な関係があった。それを、年端もいかない十代の女子に名乗らせるのだから、確信犯的な意識がまったくなかったとは言い切れないだろう。

 そして、デビュー曲である「Body & Soul」の歌詞にも、〈痛いこととか恐がらないで/もっと奥まで行こうよいっしょに…〉という一節があり、ここには、古くは初期の山口百恵に課せられた青い性の表出や、秋元康がおニャン子クラブに「セーラー服を脱がさないで」を歌わせたのと同じニュアンスがある。

 SPEEDのサウンドには、ヒップホップ、ダンスホールレゲエ、ビッグビートなど、リアルタイムの最新の洋楽の意匠が見事に採り入れられている。と同時に、ちょうどいい塩梅のノスタルジーを喚起させる過去の流行もまぶされている。例えば、「Body & Soul」のイントロにおけるギターの16ビートのカッティングは、明らかに、ナイル・ロジャース率いたシックが1978年に放った「おしゃれフリーク」へのオマージュであろう。

 デビューの時点から、SPEEDのパフォーマンスの高いクオリティーは、観る者を圧倒した。売り物のツインヴォーカルにおいては、今井絵理子が低中音部のメロディーを歌い、島袋寛子が高音部を聴かせるという形で役割を分担する。等身大の明朗で可憐な抒情を的確に表現する今井も素晴らしいが、ハリとキレを持ち合わせた島袋のハイトーンの歌いっぷりには惚れ惚れするしかない。この歌い手が小学生って、まさにアンファンテリブルである。

 ここは、近田春夫が週刊文春の名物連載「考えるヒット」でB’zの稲葉浩志のヴォーカルを表現した評言をそのまま援用したい。

〈幅一センチ肉厚二ミリほどの強力な輪ゴムをビョーンと思いっきりひっぱって、おもむろにハサミでバッチーン、と切る。ギリギリの緊張が一瞬にして解放される。音符のひとつひとつにそれと似た作業がくり返されている〉

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