アートはいかに国境を越えていくか

――今回のアートナイトでも国境やジャンルを超えた作品が集まりますが、世界で分断が相次ぐ今の時代において、そうしたアートを集めることの意味はどこにあるとお考えですか。

 アートの世界では、そもそも国籍の枠組み自体が難しくなっています。例えば先ほどご紹介したイシャム・ベラダは、パリを拠点に活動していますが、生まれはモロッコのカサブランカ。アーティストの出身は様々であり、それは大都市特有のことでもあります。国際展やフェアによっては、国名ではなく、活動拠点の都市名でアーティストを紹介するところも増えてきています。

 グローバル化によってアーティストも移動し、それぞれの場所でインスパイアされた文化的な要素を作品にしている。そうした作品を集めると、文化は政治的な意味での国境をはみ出して超えていくものなのだと感じます。アートや文化が、いかに国境を越えていくか。分断が相次ぐ現下の状況においては、そういった点に注目が集まっています。

 また、人のアイデンティティを国籍やジェンダーだけで判断すると見過ごすことが多くありますが、それを超えて本質にあるものを探していくと、案外みんな同じだと気づくこともある。世界が分断されている今、どうすれば人々が繋がれるのかを考える上で、多様な文化的背景を持つアーティストの作品を体験し、なぜその人はそれを表現しているのかを読み解いていくと、そこに「なるほど」という発見があるはずです。

――そうした発見を若いうちにしていただくためにも、若い世代の方々にもぜひ六本木アートナイトに来てほしいですね。

 そうですね。六本木アートナイトは一部を除き無料のイベントですし、誰でも見ることができる。これをきっかけに興味を持ってもらい、作家の名前を検索するだけでもたくさんの情報が出てきますから、その作家が、どのようなバックグラウンドを持ち、なぜこういうことをしているのかを自分で調べてもらえたら嬉しいです。

 アートナイトでは視覚的に強い力を持ちながら、意味を掘り下げていっても得るものがある作品を選ぶようにしていますから、見ても面白く、調べても面白いと思います。

片岡真実(かたおか・まみ)

森美術館館長、国立アートリサーチセンターエグゼクティブアドバイザー、京都芸術大学大学院ICA京都所長。第9回光州ビエンナーレ共同芸術監督、第21回シドニー・ビエンナーレ芸術監督、国際芸術祭「あいち2022」芸術監督を歴任。2027年ヘルシンキ・ビエンナーレ共同キュレーター。文化芸術に関わる諸委員会委員、国際芸術賞審査員、講演等多数。第17回西洋美術振興財団賞学術賞受賞、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受章。

六本木アートナイト 2026 開催概要

開催日時 2026年10月31日(土)~11月1日(日)
<コアタイム>31日(土)17:00~1日(日)6:00 ※インスタレーションは、10月31日(土)10:00~11月1日(日)22:00の時間帯にご覧いただけます。
開催場所 六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
入場料 無料(但し、一部のプログラム及び美術館企画展は有料)
主催 東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、港区、六本木アートナイト実行委員会(国立新美術館、サントリー美術館、東京ミッドタウン、21_21 DESIGN SIGHT、森美術館、森ビル、六本木商店街振興組合 ※五十音順)
ウェブサイト
https://roppongiartnight.com/
公式SNSアカウント
Facebook:@RoppongiArtNight
X:@r_artnight
Instagram:@roppongi_art_night_official
YouTube:https://www.youtube.com/c/rantv_roppongiartnight