生で見た時の迫力とエネルギーは圧巻

――今回は歌詞も担当されていますが、クラシックやソロ活動とは違い、他者の物語の言葉に音楽を乗せるということで、ご自身のクリエイティビティに新しい扉が開いたことはありますか?

 ミュージカルの脚本に曲をつけることは、実は『他者の物語に音を乗せる』というクラシックの精神と似ていると感じました。作詞と作曲を同時に進めるのは初めてでしたが、終始新鮮な喜びを感じながら制作に臨むことができました。今回の経験がさまざまな形で活きるのではないかと思います。

――どのような点に最も魅力を感じられたのでしょうか?

 たとえば『パーティー』という曲があるのですが、普通の意味の「パーティー」と、「政党」という意味のポリティカル「パーティー」の、「パーティー」という言葉がダブルミーニングになっているんです。それが二つのシーンを行ったり来たりするんですけど、そこで同じモチーフを一方では長調にして、他方では短調にして、その音楽的な遊びと言葉遊びをリンクさせたりしたんですね。それは面白かったです。

――実際にキャストがご自身の書かれた曲に声をのせて歌った時の発見や感動はありましたか?

 初めてキャストの歌を聴いたのは稽古場で、目の前でそれを見ることができたんですよね。それを生で見た時の迫力とエネルギーは圧巻でした。見ている間は、自分が作ったということから離れて、純粋にうれしかったですね。

――今年はミュージカルをはじめ、初めてのビッグイベントを経験されていますが、2026年のパリ祭でエッフェル塔の下で演奏されました。その栄誉に選ばれたのは誇らしいですね。

 研究者としてパリで留学生活を送っていたので、パリ祭のコンサートは見に行っていましたが、まさか自分が出られるとは思っていなかったので、感慨深いです。

――ステージではご自身の世界デビューアルバムにも収録されているオリジナル曲「After Dawn」と「きらきら星変奏曲」を披露しましたね。

 6年前に作った「きらきら星変奏曲」ですが、この曲を弾くのにこれ以上のステージはないだろうと思いました。フランス発祥の歌曲(『ああ、お母さん聞いて』)をベースにした曲なので、エッフェル塔のもとで演奏できたことへの強い納得感があります。かつて一学生として過ごした思い出の地パリで、国家的な大舞台に立てたことのほかならぬ喜びです。

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角野隼斗(すみの・はやと)

ピアニスト・作曲家。1995年千葉県生まれ。3歳よりピアノを始め、開成中高を経て東京大学理科一類・同大学院修了。ピティナ特級グランプリ、ショパン国際コンクールセミファイナリスト。YouTube「Cateen かてぃん」登録者158万人超。クラシックを基盤にジャズ、即興、編曲を融合。2023年よりNY拠点。2024年にSony Classicalと契約し、これまでに2枚のアルバムを世界でリリース、世界的ヒット。2026年ミュージカル『民王』音楽・歌詞を担当。

ミュージカル『民王』

池井戸潤の政治コメディ小説初の舞台化。現職総理大臣・武藤泰山とドラ息子の大学生・翔の心身が入れ替わる混乱を描く。主演武藤翔役に有澤樟太郎、泰山役に別所哲也。音楽を角野隼斗、脚本をツバキミチオ、演出を永井誠が担当。共演に豊原江理佳、林瑠奈(乃木坂46)、山崎大輝、上川一哉、福田転球、一路真輝、竹中直人ら。

2026年9/6~10/6東京・シアタークリエ、10/11~13大阪・梅田芸術劇場、10/17~19福岡・博多座で上演。

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