新潟県新発田市。米どころとして知られる新潟らしく、田園風景が広がるのどかな町に昨秋、一軒のオーベルジュがオープンしました。

 名前は「Né(ね)」。シンプルなこのネーミングは、フランス語で“生まれる”の過去形で“生まれた”の意味を持ち、また日本語の「根」の意味も込められています。「逆境が育んだ創造。旬を超えて時がつなぐ一皿。」をコンセプトに、文化と生命の循環を目指す「Né」。いったいどのような場所なのでしょうか?

» 保存の知恵を活かした13皿のおまかせコース
» シェフとの対話を通して、料理の答え合わせを
» 食後はそのまま部屋へ。1日1組限定の宿泊体験
» 地元産の木材を使用したオーダーメイドの家具
» 朝から満たされる新潟だらけの定食
» 宿泊者はバレルサウナでととのうことも
» ゆっくりと流れる時間こそ、なによりの贅沢


保存の知恵を活かした13皿のおまかせコース

 総料理長の布施真シェフは、ミシュランの三ツ星シェフであるアントワーヌ・ヴェスターマン氏のもとで2年間にわたり部門料理長を担当するなど、フランスでの経験も豊富な料理人。帰国後は食事療法の専門医学会でのレシピ監修や人気グルメ番組の料理監修、東京の「IWAI OMOTESANDO」総料理長を務めるなど、料理で国内外の人々を笑顔にしてきました。2025年2月から新発田市に移住し、「Né」のオープン後は総料理長として腕を奮っています。

 フランスでの研鑽をはじめ、これまでのキャリアで季節や土地の個性を最大限に活かす料理を学んできた布施シェフが、「Né」で提供するのは、新潟の風土と食文化に根差したイノベーティブなフルコースです。

 冬が長く厳しい新潟では、旬の食材を楽しめる時期は限られています。そのため、発酵や酢漬け、塩漬け、燻製、乾燥など食材を保存する知恵が代々受け継がれてきました。「Né」では、食材をさまざまな手法で保存することによって、知られざる味わいを引き出しながら、過去の旬を今に、そして、未来へとつなぐ料理を楽しむことができます。

 メニューは、18時に一斉スタートする13皿のおまかせコースのみ。すべての料理にアルコールもしくはノンアルコールのペアリングドリンクがついてきます。しかも13皿それぞれがタイプの異なるメイン料理として提供されるのです。

 席数は6席で、布施シェフがゲストの目の前で料理を一品一品、仕上げていきます。メニュー表はなく、どんな料理が、どんなドリンクとともに、どんな順番で出てくるのか、すべては出てきた瞬間までお楽しみ。この狙いについて「先入観なく、五感で感じるままに味わってほしいから」だと布施シェフは話します。

「Néでは食べたり、対話をしたりしながら料理が完成していくような形を取っています。まずはノーヒントで食べていただき、そのあとで食材や調理法など料理について知っていただく。味わいには思考が影響する部分もあるので、料理の説明を聞く前と後では感じ方が変わったりしておもしろいです。どんな味だろう? 食材はなにを使っているんだろう? などと思いながら、その答えを見つけるべく集中して食べてもらえたら嬉しいです」

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