ウチのお姑さんは90歳まで生きはりましたけど、くれたものといえば、ハンカチーフとかシミのついたセーターぐらいです。

 あるときお義母さんが自分のハンカチを「恵美子さん、持っときなさい。プレゼント」って渡してきたんですね。「あ、はい」言いながらも、その直前に私は見てたんです。お義母さんがそのハンカチでパパッと洟(はな)を拭かはったのを。「今、洟拭いたヤツやんか」と思いながらも、受け取るしかないですよね。

 シミのついたセーターなんて捨てたらいいと思うんですが、「恵美子さん、これ高かったの。2万もしたの。ここね、ちょっとお出汁のシミがついているんだけどね、スカーフ巻いたらわからないから。だから着て」って。

 そんなもの実の娘には絶対あげないと思うんですよ。けれど嫁にはやるんです。

上沼さんがもらった「極めつけのプレゼント」

 極めつけがあります。当時まだお義母さんが58歳くらいで、本当に綺麗なロングの黒髪だったんですけど、あるとき「もうシャンプーするのも邪魔くさいから、これからショートにするわ」と美容院で切ってもらったんですね。

 で、帰ってきた思ったら、何か半紙に包んだものを「恵美子さん、これあげる」と渡してくるんですよ。

 何やろって開けたら、真っ黒な髪の毛が入ってるんですよ。「ウワーッ エッ」「今、カットしてきたの、私の髪なの」。誰がいります、お姑さんの髪? それでも嫁と姑という関係ですので、「ありがとうございます。綺麗ですね」とかなんとか言って、三面鏡の真ん中の引き出しに突っ込んでおきました。

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