「ビルキンのアドリブが生んだ魔法のような瞬間」プロデューサーが明かしたビルキン×PPクリット主演の大ヒットホラーコメディ『紅い封筒』の舞台裏〉から続く

 7日閉幕した第21回大阪アジアン映画祭で最も注目を集めた1本は、ルイス・クー主演の『私立探偵』。『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の大ヒットを受けてのルイス・クー人気もあり、チケットは発売開始数分で完売するほどだった。来日した共同監督の2人の単独インタビューを行った。

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「松本清張、東野圭吾、湊かなえが好き」

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のルイス・クーが新作で選んだのは、まだ誰も見たことがない、彼自身も演じたことのない、“新しいルイス・クー”の姿だった。

 第21回大阪アジアン映画祭で日本初上映された香港映画『私立探偵』(原題:私家偵探)は、クー演じる私立探偵・アウヨンがいくつもの浮気調査を引き受けるうち、謎めいた連続殺人に巻き込まれてゆくサスペンス。陰惨な殺しと並行して、彼は妻の裏切りにも対峙しなければならなくなる。

 監督・脚本はジョナサン・リー&チョウ・マンユー。さらに『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のソイ・チェン監督がプロデュースを務めた強力な布陣だ。来日したリー&マンユーに、推理映画のおもしろさや創作のこだわり、そして『トワウォ』コンビの仕事をじっくりと聞いた。

「もともと推理小説の大ファンで、日本の作家なら松本清張や東野圭吾、湊かなえさんが大好き。推理モノを通して社会の問題を描きたい、男女の愛を描きたかった」と語るのは、本作のアイデアを提案したマンユーだ。

 リー監督のサスペンス映画『第八の容疑者』の脚本を執筆したマンユーは、その製作中から『私立探偵』の構想を練り始めていたという。きっかけは、高校時代の友人と久しぶりに食事をしたことだった。

マンユー 食事中、友人の手がずっと震えていたんです。聞けば、彼女の浮気が原因でうつ病になったという。心の傷は人間にすさまじいダメージを与えます。しかし、他人を肉体的に傷つければ責任を取る必要があるのに対し、心を傷つけることは責任を取らなくていいことになっている。それはおかしいと思い、“裏切り”を題材にしようと考えました。

2025.09.27(土)
文=稲垣貴俊