30歳の呪縛があった頃の「結婚」
ちなみに私自身が出版社を辞めたのは30歳の時。まだ30代の呪縛が濃厚にあった頃。今ではもううまく説明がつかないが、ちょっと疲れてしまったこともあって、上司に伝えた退職理由は、結婚するので。
でも結局、結婚はせず、かといってフリーで仕事をするでもなく。いや当時はまだフリーの仕事などほとんどなかったから。でも何となくアルバイトで始めた編集記事作りを、たまたまニーズがあって気がついたら毎日やっていた。

自分が化粧品の仕事をしているのも、当時は一気に化粧品ブランドが増え、化粧品バブルとも言えるほど市場が拡大していたからに他ならないが、対談ページの中にもあるように、美容ジャーナリストなどという大それた肩書を名乗ったのも、当時、記名原稿を書く上での肩書がなく「ファッションジャーナリストがいるなら美容ジャーナリストでいいじゃない?」と、編集者が決めて記載。
気恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいだったのを覚えている。つまり自分の人生は多くが成り行き。自分から事を起こそうとか、いくつまでに何をしようとか、そういう意志を持ったことすらなかった。もちろん自ら強い提言をするようなことも。目の前にある仕事をただ片付ける、それで何十年も仕事をやってきたのだ。
人の能力や気力と、社会の仕組みがズレまくっている
でもそんな自分がなぜまた「閉経」という、未だNGワードと言われがちな言葉まで持ち出して、こうした本を出すことになったのか? それも激しく誤解されてきた閉経後の現実を、できるなら多くの人に伝えて、年齢観を少しでいいから変えられないかと思ったから。

定年を迎えようとしている人が、周りにもたくさんいるけれど、なぜこの人たちが定年なのか? なぜこんなにイキイキと情熱的なまでに気概を持って働き続けようとしている人たちが、「お疲れ様でした」と言われてしまうのか? 人間の能力や気力と、社会の仕組みが全くズレまくっていることを日々感じるからなのだ。
2025.09.11(木)
文=齋藤 薫