この記事の連載
あしたの少女/バカ塗りの娘
私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?/燃えあがる女性...
人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした...
香港の流れ者たち/星くずの片隅で/枯れ葉
夜明けのすべて/アダマン号に乗って/コット、はじまりの夏
落下の解剖学/ビフォア・ミッドナイト/コール・ジェーン -女...
美と殺戮のすべて/アイアンクロー
システム・クラッシャー/ありふれた教室
違国日記/20センチュリー・ウーマン/オールド・フォックス ...
メイ・ディセンバー ゆれる真実/あるスキャンダルの覚え書き/...
コンセント/同意/HOW TO HAVE SEX
ナミビアの砂漠
Cloud クラウド
ヴァラエティ
クラブゼロ
エマニュエル
ノー・アザー・ランド 故郷は他にない
ケナは韓国が嫌いで
山田くんとLv999の恋をする
来し方 行く末
ラブ・イン・ザ・ビッグシティ
カーテンコールの灯
私たちが光と想うすべて
光が浮かび上がらせる“誰かの痕跡”

そのタイトル通り、この映画には、か細いけれど美しく輝く光が満ち溢れている。深夜のリビングで、プラバがこっそりと同僚からのラブレターを読むとき、携帯電話からの光が愛の詩を照らし出す。仕事帰りにプラバがひとり映画館へと入り、暗闇で見つめるのもまたスクリーンに照らされる光だ。
ふたりがパルヴァティに付き添いやってきた海辺の街では、真っ暗な洞窟のなか、かつて誰かが壁に残した無数のメッセージが光と共に浮かび上がる。光はいつだって、誰かが存在した痕跡を、いつか書き残した言葉を、暗闇のなかに浮かび上がらせてくれる。
3人の女性たちが抱える問題に、解決の糸口が見つかるわけではない。それでも、ムンバイから海辺の街へと移動するなかで、彼女たちはそれぞれに一歩を踏み出し、互いの間にあった距離はいつしか近づいていく。少しずつ変わりゆくこの関係にあえて名前をつける必要はない。光の下で、3人は見つめ合い、笑みを浮かべる。それ以上に必要なものなど何もないのだから。
『私たちが光と想うすべて』
7月25日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開
© PETIT CHAOS - CHALK & CHEESE FILMS - BALDR FILM - LES FILMS FAUVES - ARTE FRANCE CINÉMA - 2024
配給:セテラ・インターナショナル
https://watahika.com/

Column
映画とわたしの「生き方」
日々激変する世界のなかで、わたしたちは今、どう生きていくのか。どんな生き方がありうるのか。映画ライターの月永理絵さんが、毎月公開される新作映画を通じて、さまざまに変化していく、わたしたちの「生き方」を見つめていきます。
2025.07.27(日)
文=月永理絵