この記事の連載
あしたの少女/バカ塗りの娘
私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?/燃えあがる女性...
人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした...
香港の流れ者たち/星くずの片隅で/枯れ葉
夜明けのすべて/アダマン号に乗って/コット、はじまりの夏
落下の解剖学/ビフォア・ミッドナイト/コール・ジェーン -女...
美と殺戮のすべて/アイアンクロー
システム・クラッシャー/ありふれた教室
違国日記/20センチュリー・ウーマン/オールド・フォックス ...
メイ・ディセンバー ゆれる真実/あるスキャンダルの覚え書き/...
コンセント/同意/HOW TO HAVE SEX
ナミビアの砂漠
Cloud クラウド
ヴァラエティ
クラブゼロ
エマニュエル
ノー・アザー・ランド 故郷は他にない
ケナは韓国が嫌いで
山田くんとLv999の恋をする
来し方 行く末
ラブ・イン・ザ・ビッグシティ
カーテンコールの灯
私たちが光と想うすべて
真っ赤な炊飯器は何を象徴しているのか

プラバの抱える悩み、それは自身の結婚生活のこと。彼女はかつて家族が勧めた相手と結婚をしたものの、夫は結婚直後にドイツで仕事を見つけ、長い別居生活のすえ今では音信不通状態にある。そんなある日、突然ドイツから彼女のもとに最新型の真っ赤な炊飯器が送られてくる。送り主は本当に夫なのか。彼だとすれば、なぜ今これを自分のもとへ送ってきたのか。

この炊飯器の登場が印象的で、先日カパーリヤー監督にインタビューをした際、その理由を聞いてみた。すると監督は、炊飯器のような電化製品がどのようにCMなどの映像作品で映されてきたかに興味があったのだと答え、「“理想の家族生活”を表す道具として、セクシーといえるくらい強い照明を当てられ美しく描かれてきた」炊飯器は、「まさに家父長制社会と消費主義社会の象徴」なのだと語ってくれた(『週刊文春』7/31号掲載)。
美しく光り輝く炊飯器を贈り物に選んだプラバの夫は、「これを使って美味しいご飯を作ってね」と言いたいのだろうか? 一緒に暮らしていなくても、変わらず妻として家事をしていてほしいというメッセージ? 謎の贈り物を前に、プラバは夫に思いを馳せるが、彼の顔も声ももう記憶の中で朧げになっていて、今では、優しい同僚医師の方が彼女にとって身近な存在のようだ。
2025.07.27(日)
文=月永理絵