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女性がひとりで都会暮らしを続ける難しさ

 ヒンドゥー教徒でありながらイスラム教徒の男性と熱愛中のアヌの悩みは、一見すると特異な状況に思えるが、実のところ、私たちと遠い話ではない。堂々と恋愛を楽しみ性についてあけすけに語る女性が、周囲からどんな視線を向けられるか。そして、どんなに現代的で自由な生き方をしていても、結婚となった途端、親の存在が重くのしかかるのは、私たちが根深い家父長制から逃れられないせいだ。

 夫の名前で家を契約していたために、夫亡き後、家を追い出され故郷の海辺の街へ戻ることを余儀なくされるパルヴァティの状況も、女性がひとりで都会暮らしを続ける難しさとして、身につまされる。

 彼女たちが抱えるそれぞれの問題は、本人にとってはどれほど切実でも、社会の中では取るに足らないものとして扱われる。大都会の喧騒において、ひとりひとりの声はあまりに弱々しい。でも、暗闇のなかにそっと射しこむ光が、彼女たちの存在をたしかに浮かび上がらせてくれる。

2025.07.27(日)
文=月永理絵