この記事の連載

 日々激変する世界のなかで、わたしたちは今、どう生きていくのか。どんな生き方がありうるのか。映画ライターの月永理絵さんが、映画のなかで生きる人々を通じて、さまざまに変化していくわたしたちの「生き方」を見つめていきます。

 今回は、2025年7月25日(金)より全国公開の映画『私たちが光と想うすべて』に注目。

あらすじ

インドのムンバイにある病院で働く看護師のプラバは、結婚直後にドイツに渡った夫と長年別居生活を送っている。ルームメイトで後輩看護師のアヌは、ヒンドゥー教徒だがイスラム教徒の恋人と秘密の恋を楽しんでいる。一方病院の食堂で働くパルヴァティは、夫の死後ひとりで暮らしてきた家を、街の再開発によって追い出されようとしていた。それぞれに悩みを抱えた世代の異なる女性たちの日常と、そこから続く未来。2024年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。

結婚生活や住居の悩みを抱えて

 同じ職場で働く、年齢も家庭環境も異なる女性たち。3人は単なる同僚というよりは親密で、友達と呼ぶには少し距離がある。仲の良い姉妹のように戯れあいながらも、互いの私生活には踏み込みすぎず、親友とも家族とも違うほどよい距離感を保っている。そんな彼女たちが、ためらいながら、ゆっくりと相手の人生に一歩踏み込んでいこうとする。その道程が心に響く。

 インド出身のパヤル・カパーリヤー監督が、大都市ムンバイで暮らす3人の女性の姿を描いた『私たちが光と想うすべて』。ここに登場するのはみな、地方から上京し、今は都会で働く女性たちだ。看護師として働くプラバと後輩のアヌ。病院の食堂に勤めるパルヴァティ。みな手に職を持ち自活しているが、女性がひとりで生きるとなれば、住居をめぐる問題や、結婚をめぐる周囲からのプレッシャーなどがつきまとう。

2025.07.27(日)
文=月永理絵