〈「休みたいです」「だめだ」当時35歳で五輪出場、引退への葛藤も…ウエイトリフティング・三宅宏実を変えた“父の言葉”とは《競技生活21年》〉から続く
女子ウエイトリフティングの日本記録保持者で、現在は指導者として活躍する三宅宏実さん(39)。2023年に元ウエイトリフティング選手の中山陽介さんと結婚し、現在は1歳の息子の子育てにも励んでいる。キャリアと育児の両立や女性アスリートが抱える葛藤、夫婦の関係性について伺った。(全3回の3回目/はじめから読む)

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自分の体が変わっていくことへの戸惑い
――育児をしながら会社(いちご株式会社)のウエイトリフティング部のコーチとして活動されています。両立は大変なことも多いと思いますが、ご家族ではどういった話し合いをされたのでしょうか?
三宅宏実さん(以下、三宅) 夫は全面的に支援してくれていますね。私たちは交際当初から、「お互いがやりたいと言ったことは応援する」という姿勢でしたし、何か文句を言うということはなかったですね。ただ、出産直後は夫に対して攻撃的になってしまった時期がありました。

――どんなことでしょうか。
三宅 まずは妊娠・出産で自分の体がどんどん変わっていくことに戸惑いがありました。出産するとそれまでの環境もがらりと変わり、なかなかウエイトリフティングのことを考える余裕がなくなってしまって、本当にコーチとして現場に復帰できるのだろうかとも不安が募るばかりで……。
そんな中で、夫の環境は何も変わってないんじゃないか、不公平じゃないか、思ってしまったんです。男女の体の違いですから、仕方のないことなんですけど……。

――出産前後の体の変化や、ホルモンバランスの乱れで悩む女性は多いですよね。
三宅 あまりにも多くのことが一気に変わるんですよね。それでも夫は優しくサポートしてくれて。少しだけ言われたことと言えば「最近、なんだか面白さがないよね」と。他愛もない話で笑い合っていた時間が減っていたなと気づきました。
今は産休も明け、家族のサポートもありコーチに復帰できましたけど、また別の課題にぶち当たっています。
2025.06.20(金)
文=吉井妙子
撮影=鈴木七絵