絶対にケンカの火種になる“話題”とは?

――――きちんと話し合いで解決される、と。

三宅 結局彼に納得させることが多いんですけど、それがなんか悔しいんですよ(笑)。だから「分かった。でも一言言わせて」と断りつつ、「でも負けたくないんだよね!」と私が言って終わり。ケンカしたときはいつも、そのパターンですね(笑)。

――逆に、デメリットは何かありましたか?

三宅 競技を追求してきた中で培った信念みたいなものはやはり違うんですよ。互いに譲れない部分があるので、なるべく競技のことには触れないようにしています。以前、コーチングのことを聞いたら「そんなことも分からないの?」というような顔をされたので、これは聞く人を間違えたかもと(笑)。競技やコーチングについて話し合えば、お互いの主張が堂々巡りになってしまうかもと思って、この時以来、家の中では競技に関する話題は振らないことにしていて。

――お互いをプロとして尊重するからこその判断ですね。

三宅 彼は「山梨からオリンピック選手を育てたい」と目標を立てて、長年子供たちを指導していますから、コーチングの知識は彼の方が上なんです。

「『結婚するならお父さんと違うタイプの人』と思っていたこともあったんですが…」

――長いスパンで選手を育てようとする姿は、お父さん(=元ウエイトリフティング選手の三宅義行さん)と似ていませんか?

三宅 確かに。考え方は似ているかもしれません。コーチでもあった父とは、あまりにも長い時間を一緒にいたので、昔は「結婚するならお父さんと違うタイプの人がいいな」なんて思っていたこともあったんですが(笑)。

 優しいところだったり、不器用だったり、感情ではなく理論で選手に接するところも同じ。父も夫も友達が多いのも共通していますね。私は父に乗せられて21年も現役を続けたように、家庭では夫が上手くコントロールしてくれているのかな。なんか、それも悔しいな(笑)。

 でもまだ初心者マークの夫婦なので、ゆっくり時間をかけて太い絆を紡いでいきます。

撮影=鈴木七絵/文藝春秋

2025.06.20(金)
文=吉井妙子
撮影=鈴木七絵