21年間の現役生活と、37歳での結婚
三宅 現役時代は、家庭を持つことを考えることが難しかったですね……。でも、どうしても出産にはリミットがある。東京五輪まで続けると決めた以上、結婚したらすぐに子どものことを考えなければ、と思っていました。幸運にもすぐに授かることができましたが、結婚したのが37歳ですから、不妊治療も覚悟していました。
私の周りでも、競技と家庭、あるいは育児で悩んでいるアスリートは多いですね。みんな、競技を続けたい、あるいはコーチになりたいと思っても、実現できる手段がなかなか見つからない。引退は収入が途絶えるというリアルな問題でもあります。

職場復帰は「夫からの後押しが大きかった」
――メダリストの三宅さんでさえ同じようご苦労を味わっているんですね。
三宅 私自身、コーチに復帰しましたけど、夫の両親や私の両親の手も借りながらなんとか育児と両立しているという状況です。
現役時代は自分の努力や工夫次第で、どんな困難も乗り越えられると思ってきました。でも、結婚し、子どもを授かり、いざ現場に復帰しようと思った途端、自分だけではどうしようもないことがあるということを知りました。だから、今やるべきことに優先順位をつけ、そこからやっていこうと。もちろん、真っ先に来るのは子どもです。
ただ、私がいち早く現場に復帰できたのは、夫の後押しが大きかったと思います。同じアスリートだから、コーチとして競技に戻るのは当たり前と思っていたみたいです。

自分のやりたいことをお互いに尊重
――アスリート同士の結婚の良さはどこにありますか。
三宅 それぞれの性格や競技によって多少違いはあるかもしれませんが、私たちは自分のやりたいことをお互いに尊重していることでしょうか。そのベースの上に、彼は私とは違う視点を持っているのが新鮮です。

彼からはちょっとした言葉のキャッチボールでも、学ぶことが多いんですよ。私ががーっと喋ったことに対し「こういうことでしょ」と論理的にまとめてくれて。ちょっとしたケンカをすることもあるんですけど、彼が反論してきたら私も負けじとやり返す(笑)。そのうち私が疲れて来ちゃって「もういいよ」となるんですけど、彼は「ちゃんと話をしようよ」って。
2025.06.20(金)
文=吉井妙子
撮影=鈴木七絵