東京五輪の体操女子種目別ゆかで銅メダルを獲得した村上茉愛(まい)さん(28)。体操女子個人でのメダルは、日本史上初のことだった。現在は史上最年少で日本体操協会の体操女子強化本部長を務めるなど、後進の育成に尽力している。

 村上さんに、女子体操界が抱える問題点、男子チームや海外勢との間に感じる“差”、今後の展望について話を聞いた。(全3回の1回目/続きを読む)

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スポーツ界最年少で体操女子の強化本部長に就任

――2024年11月に日本体操協会の体操女子強化本部長に就任されました。強化本部長はナショナルチームを強化する最高責任者です。

村上茉愛さん(以下、村上) 昨年9月から募集があったので、思い切って応募したんです。書類選考とプレゼンテーションがあり、そして面接を受けました。

ーー28歳での就任は、史上最年少ですね。

村上 2021年10月に引退してからは母校の日本体育大学でコーチをしていたので、周りからの勧めもあったんです。背中を押されて、何か体操界の力になれるのであれば挑戦してみたいなと。

――ご自分では評価されたポイントはどこだと思いますか?

村上 「オリンピックの舞台で、日本体操女子が団体でメダルを獲る」。これが私の夢であり目標です。そのための綿密な強化戦略を作成しました。そこを評価していただいたのかもしれません。

 自分が大切にしたのは「新しさ」です。経験豊富な方だと、思い切った改革に二の足を踏んでしまうこともあるかと思います。「村上なら、これまでの慣例に囚われずに柔軟な発想が出来るんじゃないか」って、そんなことを期待していただけたのかもしれません。あとは選手と年齢が近いこともプラスになると思いますね。

女子体操界の重い扉をこじ開け、メダリストに

――村上さんは2017年の世界選手権のゆかで金メダルを獲得。2021年の東京五輪ではゆかで銅メダルを獲得しました。女子体操の五輪メダル獲得は1964年以来*と、実に57年ぶり。女子体操界の重い扉をこじ開けました。メダリストとしての経験も生かせますよね。
*1964年の東京五輪では女子団体が銅メダルを獲得

村上 そこも私としては大切にしたい点です。特にメンタルケアについては、経験者だからこそ寄り添える部分があると思います。

――そもそも、なぜ指導者の道に進まれたのでしょうか? 

2025.05.30(金)
文=吉井妙子