セカンドキャリア形成の難しさ

――どんな課題ですか。

三宅 多くの方がぶつかる壁だと思いますが、子育てしながら現場に復帰するというのは想像以上に難しいですね。

 トレーニング施設や試合会場には子どもを預ける場所がないし、託児所も少ない。合宿に入れば長期間子どもに会えません。幼い子どもを抱えている女性にはかなり悩ましい現実です。引退した人が経験を活かし、その競技の指導者になりたいと考えても、環境は同じです。

――パリ五輪では、出場する選手が男女半々になったとニュースになりましたが、女性コーチの割合はまだ1割ほどですよね。

三宅 圧倒的に少ないのが現状です。女性アスリートは指導者になりたがらないのではなく、目指す環境、理想形がまだ整っていないという側面もあるのではないでしょうか。

――最近では託児施設などサービスが増えてきていますが、スポーツ界ではどうですか。

三宅 託児所を設けているスポーツ施設もありますが、私の体感としてはまだまだ課題はあるのかなと。

 そうしたサービスの中には、手続きが煩雑だったり、かなり前から予約が必要になったりするところもありますよね。でも、子どもって急に熱を出したり、ぐずったり、予定通りにいかない。だから予約をしてしまったらかえって迷惑をかけてしまうと考え、利用をためらう方もいるのではと思います。

 でも、利用者が少ないということでそうしたサービスが停止してしまったらよくないなとも思います。サービスを作って終わり、ではなく、利用者は声を上げて、その声を聞いて、アップデートしていくのが理想なのかなと思います。

女性アスリートが抱く出産への葛藤

――競技を続けるために、結婚をためらうアスリートもいます。

三宅 結婚についてはパートナーとの関係性によって個人差があると思いますが、出産はどうしても女性に負担がかかってしまう。もちろん、子育てしながら競技を続けるアスリートもいますが、かなりの努力と周囲の支援があってこそだと思いますし、踏み切るまでには相当の覚悟が必要だったのではと思います。

――三宅さんご自身はいかがでしたか?

2025.06.20(金)
文=吉井妙子
撮影=鈴木七絵