三宅 2021年11月、私の36歳の誕生日に引退したんですけど、それからしばらくして2人で旅行したんです。もしかしてこの時にプロポーズされるかなと予想していたところ、最終日の夜に、指輪ケースをパカッ、っと(笑)。付き合い始めてから7年後の婚約でした。結婚したのは2023年8月。そして去年1月に息子が誕生したのを機に、住居を山梨に移しました。

 山梨は自然が多く、雄大な富士山がすぐそばにあり、時間がゆっくり流れているように感じます。心が平和になるんですよ。私は21年間も戦いの場にいたのに、「戦うってなんだっけ……?」って(笑)。

帝王切開は「まったく別物の痛み」

――女子アスリートは妊活される方も少なくないですが、三宅さんはいかがでしたか。

三宅 特に大きな問題はなかったんですけど、骨盤が狭いらしくて、帝王切開での出産になりました。これが本当に痛くて! 私は疲労骨折や腰椎すべり症、膝の故障などケガが多く、痛みには強いと思っていたけど、帝王切開の痛みはまったく別物でしたね。

 あと、そもそも妊娠中は体重制限があったり、妊娠糖尿病にも注意しなければならなかったりしますが、帝王切開の場合は手術当日に絶食しなければならないんです。ご飯が食べられないのがつらくてつらくて……。

 終わってからは回復食を経て徐々に普通の食事に戻すんですが、自分へのご褒美として「HARBS」のケーキを食べました。

 結婚生活は毎日慌ただしいし大変なこともありますが、自分で家庭を持つ幸せは、そのすべてを飲み込んでくれますね。

撮影=鈴木七絵/文藝春秋

「休みたいです」「だめだ」当時35歳で五輪出場、引退への葛藤も…ウエイトリフティング・三宅宏実を変えた“父の言葉”とは《競技生活21年》〉へ続く

2025.06.19(木)
文=吉井妙子
撮影=鈴木七絵