転校するより、転職する方がずっと楽!

――幼少期から思春期にかけての経験がひらいさんのベースの一部を作っているというお話でしたが、歳を重ねてよかったと感じることはありますか?
地元にいた頃は、学校と家しか世界がなかったのでそれが辛くて。子どもだから勝手に住む家を変えられるわけでもないですし。でも大人になると、住む場所を変えるという選択肢もありますし、場合によっては家族と距離をとることもできます。それってやっぱり快適ですよね。なにより、転校するより転職するほうがはるかに簡単なので。親も学校も変えられない環境からしたら、「辞めます」の一言で職場を変えられるってすごい楽じゃないですか?

――「転校より転職の方が簡単」って、転職に悩んでいる方には響く言葉です。
仕事を辞めるのはそんなに難しくないってみんなが思えたらいいですよね。私自身は、「我慢して大人になってよかった~」って感じてます。
「死にたいボックス」がごちゃ混ぜになっていた
――大人になってから「死にたい」と思うことも減ったそうですね。これも歳を重ねたことのポジティブな面でしょうか?
学校と家しかないと思っていた世界が他にももっと広がっていると気付いたように、死にたいという感情以外にももっと複雑な感情ってあるんだという気づきがありました。今まで負の感情の多くを「死にたいボックス」にごちゃっと収納していたのを、いったん仕分けしてみたらその中には「帰りたい」とか、「会社を辞めたい」という感情が含まれていたんだと分かってきたんです。感情を分けるボックスが大きすぎて、ごちゃ混ぜになってしまっていたのかもしれません。

以前より感情を細かく仕分けできるようになったからといって、それですごい楽になったかといえば、そんな単純なことでもないんですが、「いなくなりたい」と感じることは減ってきたような気がします。
――今の文筆家という仕事が、ひらいさんの心にフィットしているのも大きいのかもしれないですね。
書くだけでいいなら、すごくフィットしていて幸せです。本が売れたとか、売れてないとか気にせずに山奥でひっそり執筆活動をしていたいです(笑)。波が立たない日常が理想なので。
ひらいめぐみ
文筆家。1992年生まれ、茨城県阿見町出身。7歳の頃からたまご(の上についている賞味期限の)シールを集めている。2023年12月に『転職ばっかりうまくなる』(百万年書房)を刊行。

ひらめちゃん
定価 1,980円(税込)
百万年書房
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Column
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ゲストの方に気になる話題を語っていただくインタビューコーナーです。
(タイトルイラスト=STOMACHACHE.)
2025.06.14(土)
文=高田真莉絵
撮影=佐藤 亘