【ヒント】イタリア語で「ペッシェ」が指すものは…?

じゃーん! ペッシェとはイタリア語で魚、つまりこれは、サーモンやスズキなど長い魚を切らずに調理するために使う専用の鍋。
鍋の中の穴あきトレイの上に魚を置くと蒸し料理が、トレイを使わず直接食材を入れて調理すると煮魚ができるという万能鍋で、取っ手を持ってトレイを引き上げることで魚を傷付けることなく綺麗に取り出せるという、二重にも三重にも優れた器具なんです。
長い魚を切って使うより、「魚に合わせた鍋を作ってしまおう!」と考えるユニークなところがイタリア人らしくて私は気に入っています。以前ご紹介した「アスパラ鍋」なんかも、「アスパラを立てて茹でたい」というこだわりが感じられておもしろいですよ。
マンマの絶品イタリアン、その陰に潜む愛おしい偏愛調理器具の数々は、時代を超えて料理好きの心をときめかせるのです。
【おまけ】パスタに使う器具はこんなにたくさん!
イタリアの各州には様々なパスタが存在し、その数なんと500種類以上! 各地域ごとに存在する様々なパスタ道具をご紹介します。

まずはこの写真、一見何に使うかさっぱりわからないヘンテコな形のものばかりですが……。左上から時計回りに、銅製ラビオリカッター、ニョッキ板、コルツェッティ用の木型、ラビオリの型抜き、ガルガネッリ用木型、タリアテッレ用カッター、両面ラビオリカッター、トルテッリ用パスタカッター、サイズ調整可能ラザニアカッター。

そしてこちらは「ラビオリ」を大量に作れる専用めん棒。

詰め物を挟んで一気に綿棒を押すと一度に沢山のラビオリが出来る優れもの。しかし時代の変化とともに家族の在り方や過ごし方も変わり、マンマ曰く、最近の若者はパスタを打たなくなってしまったのだそう。なので、こうして一度にたくさんのパスタが作れるめん棒も出番がなく、台所の片隅で眠っているのだとか。
それでも、パスタはめん棒で打った方が微妙な擦れや若干の厚みの違いでソースの絡み方が複雑になるので、手間は掛かるけど美味しいのです。特にラビオリは特別な日に作るパスタ。せっかくだから先人の知恵が詰まった伝統器具で少しだけ手間をかけて作るのもアリですよね。
» イチジク×サラミ×モッツアレラの 組み合わせ、最高! ワインに合う 秋の味覚レシピ「イチジクのパイ」
» イタリアで秋冬に愛される 農民のひらめきで生まれたドルチェ 現地でしか味わえない絶品の甘味!
» 殻つき卵をそのままクッキーに? イタリアの復活祭「パスクア」の 伝統お菓子がおもしろい!【レシピ】
» イタリアの春を味わう一皿を簡単に。 「パスタ・プリマヴェーラ」のレシピ 現地の“アスパラ専用鍋”が珍しい!
» 濃厚クリームパスタに飽きたらコレ! 季節のキノコを沢山入れて自分好みに ポルチーニ茸のさっぱりオイルパスタ
齊藤奈津子(さいとう なつこ)
イタリア料理研究家。TVディレクターとして様々なジャンルのテレビ番組を制作するうちにイタリア料理の素晴らしさに目覚め、2009年、イタリア料理研究家1級を取得し翌年イタリアのフィレンツェへ料理留学。帰国後、イタリア各州の郷土料理を紹介する「イタリア家庭料理教室180℃」を開業。イタリアの食文化、そしてチョコレートを広める活動を続けている。インスタ:@natsukosaito0104

Column
簡単なのに味は抜群! イタリア・マンマの愛情レシピ
郷土料理こそがイタリア料理の真髄! イタリア各地方の郷土料理やマンマの工夫料理を研究している齊藤奈津子さんが、家でも簡単に再現出来る本格イタリア料理のレシピをご紹介します。
2025.03.30(日)
文・提供写真=齊藤奈津子
撮影=釜谷洋史