手先が器用で、マメな夫との新婚生活
近田 結婚式は挙げたの?
浅野 挙げてない。お金もなかったからさ、写真館に記念の写真を撮りに行ったぐらい。二人で最初に借りた横浜の堀ノ内町ってところにあるアパートの家賃は35,000円だったかな。白黒のテレビを買ったんだけど、親戚のおばさんが「こんな時代に、まだ白黒のテレビ観てるのかい」って嘆いて、カラーテレビを買ってくれたのよ(笑)。
近田 そりゃよかった。ちょうどそのあたりが、白黒からカラーに切り替わる端境期だったもんね。モトテイはさ、人脈から察するに、結構な遊び人だったの?
浅野 いや、どっちかって言うと真面目な人。銀行からお金を下ろして何か大きなものを買っても、その分の金額は必ず後で戻すタイプ。結婚相手として一番安心じゃん。
近田 堅実なんだ。失礼ながら、順子さんのイメージからすると、意外だよね(笑)。
浅野 もともと彼は、家の商売に関わりながら大学に通ってたの。でも、大学卒業後は実家の商売から離れ、よその会社に就職したのよね。絵を描くのが好きな人だったから、デザイン系の職場を見つけて、そこに入ったの。
近田 忠信君も絵を描くよね。そこには、やっぱり芸術志向の両親のDNAが反映されてるんだね。

浅野 モトテイは本当に手先が器用で、しかも性格がマメでさ、私の母が家に来ると、その足の爪を綺麗に切ってあげるのよ。
近田 そこまで気が回るんだ。すごいね。
浅野 私なんかは乱暴だから、同じように母親の足の爪を切っても、「順子、痛いよ!」なんて声を上げられる始末だったんだけど(笑)。そうそう、私の髪も、息子の髪も、ずっと切ってくれてたのよ。美容師になりたいという気持ちも持っていたことがあるみたい。
近田 お子さんを授かったのは、順子さんが何歳の時?
浅野 21歳で長男のKUJUN、23歳で次男の忠信が生まれたの。
近田 忠信君が、自分の母親は公園でビキニを着て日光浴してたって言ってるインタビューを読んだことがあるんだけど、あれって本当なの?
2025.03.16(日)
文=下井草 秀
撮影=佐藤亘