この記事の連載

近田 あれっ、中華街のちょっと悪いのは?

浅野 そいつに、他の男とそうなったのがバレて、ボコボコにされたわよ。

近田 順子さんが? 後の旦那さんじゃなくて?

浅野 そう。男同士の喧嘩になったら大変なことになっちゃうじゃない? 私一人で済めばいいかと思って、私一人でその男のところに行ってさ。その直後、友達の家に行ったら、驚かれたわよ。「あんた、何て顔してんの!」って(笑)。それで、前の男とはすっぱり縁を切った。

早くから遊んでいたから、人を見る目が養われた

近田 大変な目に遭ったねえ。そのモトテイのどこに惹かれたの?

浅野 何だか優しそうな人だなあと思ったのよ。いくら顔がおへちゃだろうが、背がちっちゃかろうが、大事なのはその人の人間性だからさ。それまで、いろんな人を見てきたり、いろんな人と付き合ってきたりしたから、我ながら勘は磨かれてたのよ。

近田 若くして大したもんだったのね。

浅野 14歳から遊んでるんだから、見る目があるのは当たり前よ(笑)。彼と付き合ううち、熱い性格に魅せられ、情が湧いてきて、あっという間に結婚したってわけ。

近田 相手の方も、だいぶ若かったんでしょ。

浅野 うん、一つ上。結婚した時点じゃ、まだ彼は大学通ってたからね。

近田 まだ結婚は早いとか、周囲に反対はされなかったの?

浅野 私たち、そんなのに構うタイプじゃないから。親の助言は、心配して言ってくれてることだから、一応聞くよ。ただ、生きていくのはあくまでも私たちだから、自分の勘とかそういうものに頼るしかない。人がああだこうだ言うことを聞くと、不安になっちゃうじゃない。そんなもの、取り越し苦労が80%ぐらいよ。

近田 確かにね。それは一番大切なことだと思うよ。

浅野 そうしないと、何が起こっても人のせいになっちゃうからさ。あの時、誰それが何とかかんとか言ったからこうなったって。そうじゃないでしょ、決めたのは自分でしょって。

近田 人間、他人のせいにしちゃうんだよね。

浅野 それやっちゃうと、楽な方、楽な方に流されちゃうからさ。よくないよ。

2025.03.16(日)
文=下井草 秀
撮影=佐藤亘