“混ぜずに飲む”ことで味に陰影が生まれる
カップにショコラ ショを注いだら、白味噌キャラメルクリームをマーブル状に混ぜたホイップクリームと、青紫蘇のペースト、炒り黒胡麻をトッピング。
「黒胡麻は、味わいをより深くするために散らしました。黒は陰陽の“陰”の色で、私にとっては日本文化を感じさせる色なんです」と、エヴァンさんは話します。
混ぜずに味わうことで、味わいと香りに変化が生まれ、より面白味のあるおいしさを楽しめるのが、とっても魅力的。エヴァンさんとアントナンくんの笑顔が溶け込んだような、やさしくてほんのり清々しく、まろやかなハーモニーが心と体にしみわたります。
そんなショコラ ショを味わいながら、「僕にとってショコラ ショは、子供の頃の思い出の味なんです」と、語り始めたエヴァンさん。園芸用樹木の栽培を仕事とし、甘いものが大好きなお父さんと、料理好きなお母さんのもとに生まれ、お母さんがよくつくってくれたのがショコラ ショだったといいます。日曜日だけはブリオッシュを買って、ショコラ ショとともに味わってとてもうれしかったのだとか。
「板チョコレートを牛乳で溶かしただけのもので、今、みんなが飲んだらあんまりかもしれないけれど、僕にとっては宝物。今でもショコラ ショを飲むと、当時の光景や香りを思い出します。ちょっと落ち込んだり悲しいときは、おいしいものを見つけて大好きな人たちとシェアするのが一番幸せになる。僕にとっては大切な味なんです」
傍らで耳を傾けていたアントナンくんにとっても、大好きなパパと一緒につくり、一緒に楽しむショコラ ショは、特別な味。おいしいものを通じて幸せを分かち合う思いは、世代を超えて大切に受け継がれていきます。
2024.12.06(金)
文=瀬戸理恵子
写真=長谷川 潤
協力=星のや京都