バカンスは必ず家族で過ごす
世界的ショコラティエとして、いつもは仕事で忙しいジャン=ポール・エヴァンさんですが、バカンス中はずっと家族と離れず一緒に過ごすのがエヴァン家のルール。昨夏は、奥嵐山に足を運び、緑豊かな大堰川のほとりに佇む宿でリラックスしながら、さまざまな日本文化と美食に出合う週末を楽しみました。
その旅のさなか、コックコートを着てキッチンのある部屋にやって来たエヴァンさん。隣には、同じくコックコートを着た、12歳の息子・アントナンくんの姿が。2人でとっておきのショコラ ショをつくるというのです。
「タイトルは、『川辺のショコラ ショ』。この旅からインスピレーションを得て、味わいを考えたひと品です。楽しみ!」と、エヴァンさんは笑顔を浮かべ、アントナンくんも大張り切りでとってもうれしそう。父子の微笑ましい共演が始まりました。
白味噌に青紫蘇…どんなショコラ ショに?
まずは、スペシャルな味わいを醸し出すトッピングづくり。明るい色合いに仕上げたキャラメルに加えるのは、国産大豆で造られた白味噌です。「京都でつくるショコラ ショですし、キャラメルに白味噌はよく合いますから。深みのあるまろやかな味わいが広がると思います」と、エヴァンさん。
続いてすり鉢を取り出し、アントナンくんと一緒にちぎり始めたのは、青紫蘇(大葉)です。
「青紫蘇を合わせることにした理由はシンプル。おいしいから! 僕が京都に来るのはいつも夏で、青紫蘇がおいしい季節なんですよね。京都らしいし、大地の味が加わってショコラとも相性がいいと思います」と、エヴァンさんは話します。その傍らで青紫蘇をするアントナンくんのまなざしは、真剣そのもの。おいしいものを心をこめてつくる思いは、言葉にせずともしっかりアントナンくんに受け継がれています。
そしていよいよ、ベースとなるショコラ ショづくりへ。アントナンくんにやさしくていねいに説明しながら、任せられるところは任せつつ、カカオパウダーとチョコレートをミルクに溶かしていくエヴァンさん。
「今回はカカオ分76%の『タブレット エクアトゥル』を使いました。フローラルな香りが青紫蘇によく合うかと思います。ポイントは、泡立てながら加熱して、火から下ろした後にも泡立て器を使ってよく泡立てること。ほら、こんな風に泡立て器を立てて、ショコラティエール(チョコレートドリンク専用のポット)みたいに両手ではさんでクルクルッと回すと、ふわふわの泡が立つでしょう?」。ショコラティエールがなくても、細長い容器を使って必ずやってほしい工程です。
2024.12.06(金)
文=瀬戸理恵子
写真=長谷川 潤
協力=星のや京都