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「弱音を吐いちゃうのも小泉今日子じゃん」

――「花の82年組」同期として、同じようにキャリアを重ねる本木さんに、ライバル心や対抗心を感じることはありませんでしたか?

小泉 全然ないですね。本木さんだけではなく、同期のほかの人に対しても、そんなふうに思ったことはありません。82年デビュー組って、中森明菜さんにしてもシブがき隊にしても、自分を持っていて個性的な人が多かったんです。だから当時から、お互いに自分にはない相手のよさを認め合う空気がありました。

 同期の友達には、今もライブ活動している人もいます。そういう人を見ると、「みんな頑張ってるんだな、私も頑張ろう」と、刺激をもらっています。

――まわりを受け入れて認めることができるのは、今までのご自身の仕事を自信を持って受け止めているからでしょうか。

小泉 自信というよりも、「何でもありなのが小泉今日子」だと思っているからだと思います。最初から「小泉今日子はこういうものだ」と決めつけず、「弱音を吐いちゃうのも小泉今日子じゃん」とか、「たまにサボっちゃうのも私じゃん」といったゆるさをずっと持っているので、そもそも「勝ち負け」の意識がない。だから、頑張らなくてもいいし、頑張ってもいい。そこに「誰かとの比較」は必要ないと考えています。

――「何でもありなのが小泉今日子」と考えると、老いへの恐怖や不安も薄くなりますか?

小泉 私は年を取るのが怖いと思ったことはありません。むしろ今も、心のどこかで「早く大人になりたい」と思っています。

 若いときは、自分がこんなに長く生きるなんて想像していなかったので、想定以上年齢まで来たからには、より楽しんで生きてやろう、みたいな心持ちなのかもしれません。

――若さへの執着や未練を捨てきれない人もいます。

小泉 でも、「若いほうが、価値がある」って言っている人って、大人ばかりじゃないですか? 若い人は、ネットというタイムマシンに乗って古いものを発掘するなど、かえって「若さ」を気にしない人が多いと思います。

 それよりも、今は、ポジティブなエネルギーが世の中に圧倒的に足りないような気がして、それが心配です。だからテレビ番組や音楽で、まっすぐでポジティブなエネルギーみたいなものを感じると、すごく感動します。

 先日、NHKの『あさイチ』という番組に出させてもらったんですけど、番組のスタッフさんがとってもポジティブで、すごくいい空気が漂っていました。その日は木村カエラちゃんがゲストで、カエラちゃんの歌もまっすぐでポジティブなので、「今日は本当にいい朝が迎えられた」と大満足でした。こういう、すかーんと抜けた明るさが、世の中にもっともっと満ちていくといいなと思っています。

2024.11.22(金)
文=相澤洋美
写真=杉山拓也
スタイリスト=藤谷のりこ