この記事の連載
- 松岡亮さんインタビュー #1
- 松岡亮さんインタビュー #2
2023年7月新橋演舞場にて上演された、新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』。大人気ゲーム『刀剣乱舞ONLINE』の初の歌舞伎舞台化として、大変な注目を集めました。大好評で幕を閉じ、2024年にはシネマ歌舞伎として上映。
さらに京都南座にて「衣裳展」も実施された本作品が、待望のBlu-ray&DVD化されました。脚本を担当した松岡亮さんに、ともに楽しめる上演台本も収載された公式図録のことも併せて、夏の盛りの東銀座でお話を伺いました。(全2回の前篇。後篇を読む)
歌舞伎ならではの『刀剣乱舞』を作りたいという思い
――まずは新作歌舞伎としての『刀剣乱舞』ができるまでを伺いたいです。
松岡亮さん(以下、松岡):2022年ごろに、尾上松也さんとの話が始まりました。当時はずっとリモートでしたが……。松也さんは「古典味のある新作歌舞伎を創りたい」ととても意欲的で。若い方に楽しんでいただくことを念頭に置きながら、セリフを現代語にするなどはせずに、あくまで「古典歌舞伎」に軸足を置いた作品になりました。
皆さんご存じの通り、刀剣乱舞には、アニメやミュージカル、舞台など、すでに素晴らしいメディアミックスが存在します。逆に言えば、歌舞伎ならではの刀剣乱舞を作らないといけないと、演出の松也さんや尾上菊之丞さんと話し合っていました。
初日の幕があくまでは祈るような気持ち
――歌舞伎の美しさも刀剣乱舞の世界も、存分に楽しめる作品でした。新作で、原作は若者を中心に人気のゲーム。冒険でもあったのではないでしょうか。
松岡:刀剣男士や「審神者」について、解説を入れたのは歌舞伎ファンのお客様のためでした。刀剣乱舞と歌舞伎、どちらのファンのお客様にも楽しんでもらえるよう精一杯準備しましたが、初日の幕が上がるまでは、お客様の反応がどうなるかヒヤヒヤしていました。でも、初日の二幕目の終わり、客席から聞こえてきた拍手の熱量と反応がとても大きくて。あ、これは、と思っていたらカーテンコールで、スタンディングオベーションが自然と起こりました。それを見て、ようやく一息ついて喜べたという感じです。
稽古の時点で手ごたえはありましたし、出演俳優の皆さん、スタッフの皆さんと一丸となって取り組んで作り上げています。ただ、作り手の自信とお客様の反応は必ずしも比例するものではありません。最後はお客様が、どう受け入れてくださるかです。クライマックスの三日月宗近と足利義輝の一騎打ちのシーンの後、万雷の拍手が聞こえた瞬間は、脚本家冥利につきると思いました。
――歌舞伎ならではのシーンなどはありますか?
松岡:踊りの場面でしょうか。足利義輝の宴の場で、刀剣男士がそれぞれ踊ります。振付の尾上菊之丞さんが各刀剣男士の設定などを非常に読み込んでくださって、ふさわしい振りをつけてくださいました。
2024.08.28(水)
文=宇野なおみ
写真=山元茂樹