#7 昔は、経血コントロールができていたという説の真偽
昔の女性たちは巧みに経血コントロールをしていたという説が真しやかに語られた。経血は腟の中に溜めておき、トイレで流すことができたと言うのだ。
が、今やそれを否定する声が主流。じゃあなぜそんな可能性が語られたのか。下着をつけない着物の作用でインナーマッスルが発達していたとの仮説のもと、骨盤底筋を鍛えるべしという話とセットで広がったという説が一つ。布ナプキンや月経カップの再注目で、その裏付けが必要だったとの見方もある。
腟トレは必要だが、経血コントロールとは分けて考えるべき。
#8 大ヒットのビクトリヤ月経帯は一種のステータスだった
大正時代から昭和初期に一世を風靡したのがビクトリヤ月経帯。今で言うところのサニタリーショーツのように、肌に当たる部分に初めて薄いゴムが使われ、防水になっている画期的な月経帯であり、それなりの高級品であったために、愛用者であることは一種のステータスになったほど。
芥川龍之介の小説『悠々荘』に、さり気なくこのビクトリヤ月経帯の話が出てくるほど、時代のトレンドだったのだ。広告の華やかさも相まって、着物や洋服を汚さない防水機能の登場が、女性たちの気持ちをどれだけ豊かにしたか、計り知れない。
#9 第二次世界大戦中、脱脂綿すら使えなかった?
ただ、戦争は月経事情をまた最悪なものにした。第二次世界大戦が始まると、原料を中国からの輸入に頼っていた脱脂綿の供給が一気に制限され、古布やちり紙が代用された。
一方、先にご紹介したビクトリヤ月経帯に使われていた薄ゴムも統制の対象となり、古いモスリンなどで対応することが推奨される。
また、使用済みの脱脂綿やボロ布を腟に詰め込む方法が取られたりしたが、戦時中だけに不衛生になりがちで、感染症のリスクも非常に高まった。時代は完全に逆戻りした訳で、戦争はこんなところにも悲劇をもたらすのだ。
2024.06.02(日)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)
写真=釜谷洋史